翻訳ソフトの今

  ラテン語一緒に読んでいる若い人から最近、無料の「Google翻訳」なる翻訳ソフトの存在を教えられ、大まかなこと知るためには、こりゃほんとうに便利だとこのところ遊んでいる。デジタル論文が手軽に試訳できて、たしかに超便利。キーボード打たなくても日本語が出てくるので、労力の節約にもなる。ただ、活字本の場合はコピーしてOCRスキャンし、訂正しないといけないので、そう簡単にはいかないだろうし、意味不明の誤訳部分の修正にやはりかなり時間がとられてしまって、これじゃあ最初から訳した方が、などと文句いいながらであるが。

 後輩がこれまでも「ざっと読んでみましたが」などと書いていた理由がやっと分かった気がする。若い人は先刻ご承知で利用しているわけだろう。皆さんおやりなのに、私は相変わらず辞書引き引きタイプ打ってやってたのがバカみたいな気がしないでもない。とはいえ試して見て、さすがにラテン語の邦訳は無理みたい。 それとあれこれやっているうちに、jpgをpdfに変換するソフトなんかもみつけてたが、やっぱりちょっと面倒だ。 

 以下は、ローマ・トイレ関係の本のAmazon.comでの紹介でオランダ語から直接日本語に訳し たもの。ざっと文意をとるためにはほぼ完璧で、びっくり。細かいこと言うと冒頭からちょっと問題かもだが、古代ローマ世界には一定の共通の給水・排水システムがあったわけではなく、状況に合わせて住民がそれぞれ小規模な解決策を色々ためしてみて、それらがだめだったとき初めて大規模で高価な工事を行ったのだ(それが従来、他文明や後世の中世・近世ヨーロッパとの比較で、優れた水道渠や地下排水システムとして喧伝されてきたわけであるが)、という重要な趣旨は十分に伝わるはずだ。ま、第2次世界大戦のドイツ戦車となると映画などでは必ずと言っていいほど「6号戦車」(Tiger:アハトアハト)が出てくるが、確かに最強だったがコスト的に量産できなかったのが現実だったのと似ているのかも知れない。

^^^^^^^

Gemma C.M.Jansen, Water in de Romeinse Stad Pompeji-Herculaneum-Ostia,2002(https://www.amazon.co.jp/-/en/Gemma-C-M-Jansen/dp/9042911182

ローマ人は都市の水供給が良いことで知られています。すべての都市で、彼らは優れた給水、衛生設備、排水システムを提供しました。この研究では、イタリアで最も保存状態の良い3つのローマの都市、ポンペイ、ヘルクラネウム、オスティアのこのような施設について説明し、比較します。これは、ロ ーマのシステムがなかったことを示していますが、ローマ人は水問題に対してさまざまな標準ソリューションを持っていて、さまざまな組み合わせで適用していました。都市の住民は、井戸、雨水収集、またはセスプールなどの好ましい小規模施設を調査しました。 これらが効果がなかった場合にのみ、上下水道システムなどの大規模で高価なインフラストラクチャの作業が開始されました。

^^^^^^^^^^^^  

 次はイタリア語。Barbara Lepri et Lucia Saguìの論文(Vetri e indicatori di produzione vetraria a Ostia e a Porto,2018)の冒頭、ためしに掲載すると以下のごとし。註番号なんか直さないでそのままにしている。

^^^^^^^^^  

 オスティエンセのガラスシーンに関する私たちの知識はまだ非常に不足しています。最新の発掘調査のガラスの発見物が現在ほぼ定期的に公開されているとしても(図1)、それらは体系的な研究ではありません。1唯一の例外は、スイマー浴場の発掘に関する巻に掲載された先駆的な研究によって表されます。 これはそれが作られた年を考えると、特にフラビアン時代から、そして2-3世紀の終わりから、まだオスティアガラスの研究の基礎を表しています。2 アウグスブルク大学のMacellum4ブロックの発掘調査で、ドイツ考古学研究所ロムとローマのアメリカンアカデミーが地域III、IV、Vで実施した37のエッセイで見つかったガラスを、ここ数か月で研究する可能性3(図.2)、ポルトゥスのローマにある英国アカデミーのものでは、皇居のエリア(図3)5、そしてパオラ・ゲルモニ博士の利用可能性のおかげで、オスティアの預金と文書にアクセスするそして彼女の共同研究者6は、まだ多くの調査が残っているとしても、その範囲が次第に広がっている研究に着手するように私たちを刺激しました。

^^^^^^^^^^^

 とはいえ、辞書や文体が一番鍛えられているはずの英語でも、書き手の文体によってぐちゃぐちゃな訳になる場合もあった。たぶん技巧を凝らした文体なのだろう。それ以上に自分的に辞書を鍛えるわけにはいかないようで、これが目下の不満。Senatorが「上院議員」、Emperorが「天皇」と訳されるが、それを私が「元老院議員」「皇帝」と提案してもたぶんダメだろう。その道の人から聞いた所では、翻訳業用の高額な変換ソフトもあるらしいが、とてもリタイア老人には手が出ない。

 ポーランド滞在の林君からは、以下のような指摘が。「Googleのオンライン翻訳は、ポーランドのニュースを知るために私もよく使い ますが、データが蓄積されてないとマイナー言語のオンライン翻訳はきついです。(中略) ポーランド語→日本語は使い物にならないので、ポーランド語 →英語でGoogle翻訳はよく使っていますね。 データが蓄積されているのでネット翻訳でも普通に読めます」。ビッグデータの解析投入で情報を早く正確に取得できるようになってくれることは、残り時間が限られている痴呆直前の私にとってなにはともあれありがたいことに違いない。

【追記】その後、あれこれやっていると、訳されていない脱文が生じている事例に遭遇。それなりに見直しは必定であると認識。

【追記2】イタリアのF女史から、同様の翻訳ソフト「DeepL」を教えてもらった。有料にすると独自の辞書も構築できるという触れ込み。Googleよりはこなれた日本語のように思える。

Filed under: ブログ

No comment yet, add your voice below!


Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Comment *
Name *
Email *
Website

CAPTCHA