月: 2021年4月

ラルゴ・トッレ・アルジェンティーナ広場、来年公園化

 ローマのヴィクトリオ・エマニエル2世通りに面した、ユリウス・カエサル暗殺場所に隣接の、共和政代の4つの神殿が地下に保存されている聖域「Area Sacra」を観光客向けに一般公開するための作業が、五月から始まるらしい。資金提供はブルガリで約100万€を寄附した。ここは猫の楽園となって久しいのだが、彼らはどうなるのだろうか。

上が北:巨大トイレは遺跡の左隅を南北に設置されている

 この遺跡は、ムッソリーニによる1926年の都市計画プロジェクトで発見された。かなり雑な発掘だったので、年代決定等に支障をきたしたらしい。私はオスティアへの途中にあるモンテ・マルティーニ博物館(国立ローマ博物館の分館)で,そこ出土の女神フォルトゥーナの巨大な頭部や手足と不意打ちに遭遇しビックリしたことがある。これは下図右のBの円形神殿に安置されていた。

、ここには頭部と右手だけ見えるが左足首もある。もとの立像は8mあった由;上の「4」が当面の巨大トイレだが、左方向のそれはポンペイウスのポルティコに属していたトイレとか

 トイレ研究者としては、カンポ・デイ・フィオーリ寄り、四神殿の裏側の北半分に、ポンペイウスのポルティコとの間に作られた巨大公共トイレを見ることできるので、大注目なのだが、さて公園化されたとき、それを当時の地面に立って見学できるかどうか。もちろん見れるようになっていてほしいが、まあ無理か。

、便座や背後の壁は失われているが、足元の溝は残っている;、ちょっと大袈裟な復元想像図:この向きだとこのトイレもポルティコに所属していたような・・・

【予告】この近くにもうひとつ面白いトイレが残っている。それが「クリプタ・バルビ」だ。それについてはいずれ「トイレ噺」のほうで。

西端のポンペイウス劇場、ポルティコ、4神殿の区画のやや北東が「Cripta Balbi」
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世界キリスト教情報第1579信:2021/4/26、またはTVドラマ「The Young Pope」

≪お詫び≫ 4月19日付け前信で掲載した記事『◎米福音派に反コロナワクチンの風潮も広がる』は、編集過程の手違いで、編集を終了したものとしてCJ C 通信が配信しました。受信されておられる皆さまに大変ご迷惑をお掛けしたこと をお詫びし、合わせて掲載記事を取り消し、削除します。(主宰者)
= 目 次 =
▼教皇、一般謁見で「口で唱える祈り」の大切さ説く
▼バチカンで司祭叙階式=教皇「いつも神の民の近くにいるように」
▼教皇、ウクライナ東部情勢に和解と平和呼び掛ける
▼プーチン露大統領がゼレンスキー・ウクライナ大統領の会談提案に「モスクワで」
▼アルメニア人「ジェノサイド」認定は米国への信頼損なう=トルコ外務省
▼イスラエルで「死海文書」の新たな断片発見か=共同通信報道
▼《メディア展望》

 今回は、ニュースの紹介ではなく、今スターチャンネル1で放映が始まっている「The Young Pope:美しき異端児」(https://www.star-ch.jp/drama/youngpope/sid=1/p=t/)に触れたい。これは2016年イタリア・フランス・スペインの共同制作のテレビドラマで、日本では2017年にWOWOWプライムで全10話が放映されたらしいが,私は知らなかった。今回は4/19(月)23時から開始されている。しかもスターチャンネルで5/24から続編全9話も開始されるようだ。

 これまで3回分みたがなんとも破天荒な内容でドキドキさせてくれる。

 まあ現代の寓話としてバチカンに興味ある未見の方々には一見をお勧めしたい。DVDもあるようだし、HULUではもちろん有料だが、第一シリーズ全編を見ることができる(https://www.hulu.jp/the-young-pope)。

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最近気になったどーでも情報:飛耳長目(81)

① 広島からの帰りに入手した『Wedge』33−5に気になる記事があった。元同僚だった鬼頭宏「「人口減少悲観論」を乗り越え希望を持てる社会を描け」pp.34-37。日本史上これまで4度の人口減退期があって、それには相応の事情があり、いずれも次代を切り開く文明システムへと転換する過渡期、という視点から将来の展望を見いだすべきだ、というわけ。著者は4度目は1970年代から少子化が始まり、すでに出生率が回復した国もある中で、日本など相変わらず深刻で、これらの国に共通するのは女性の地位が低いことだ、と喝破。核家族という現実の中で「男女が平等に社会に進出し、家事、育児、介護を分担するジェンダー平等社会を実現することこそ、出生率回復の鍵である」、と。

② 同上誌に、勝股秀通・徳田八郎衛「学術会議の知られざる真実:軍事忌避を金科玉条にするな」p.50-53:以前もどこかで勝股氏の所論を紹介した記憶があるが、防衛庁OBの徳田氏との対談。軍事研究をなべて否定するなどと言うのは研究の自滅でしかない。「軍民両用」は無視しがたい、という当たり前のことを主張している。日の丸ワクチンの立ち後れだって、細菌兵器なんかを前提にやらなければ開発研究できないわけだし。薬品会社は儲からないから全然やろうとしないわけで、そこに国家資金を投入しなければ、いざというとき自滅するしかない現実を、学術会議は、国民はどうする気なのであろうか。

③ 「田中宇の国際ニュース解説 無料版 2021年4月24日 http://tanakanews.com/」:新型コロナのPCR検査は遺伝子類を人工的に何回も増幅して染色体を可視化するが、それをやり過ぎると、「偽陽性」が多発する。その増幅限度は35サイクル(2の35乗=344億倍)で、30サイクル以下がいいのだが、日本や米国のそれは40サイクル、英国は45サイクルで、感染状況を過大に見積もって騒いでいる、というもの。それにより、日本は経済を自滅させる方向に動いている、と分析する。

③ 新型コロナがらみで、ちょうど面白い1985年の情報を読んだ。坂本鉄男『ビバ!イタリア』「熱いキス一回で寿命は三分縮まる」p.89-90:日刊紙メッサジョーロに、フランスの女子大学生の卒論が紹介されていて、挨拶代わりのあっさりしたそれ(イタリアのバッチョを想定か)が12箇所の筋肉をうごかすだけなのに、いわゆるフランス式濃厚キッスは29箇所を活動させるだけでなく、相互の口中に9ミリグラムの水分、0.7ミリグラムのタンパク質、0.18ミリグラムの有機物、0.71ミリグラムの脂肪、0.45ミリグラムの塩分、250個の細菌を送り込んでいて、口腔内や咽喉内部の多くの炎症の原因となっている由。

 ま、これは別としての私見であるが、どうも人種によって感染症への先天的・遺伝的耐性に強弱があるようで、最強がアフリカ人、そして東洋人、一番弱いのは白人、のような気がする。だから、西欧では一挙に世間が変わる(人間が入れ替わる)劇的な「革命」が起こりやすく、その点日本は「かくめい」と称しても相も変わらず年寄りが生き残り、世間の鼻先を牛耳っている、まあそんな妄想が浮かんでいる今日この頃である。

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菜園の聖母教会と天正遣欧使節

 坂本鉄男『ビバ!』p.169-171を読んでいてみつけた。天正遣欧使節がらみでの新史実が1985年ごろ発見されて、そのエピソードの舞台となった教会が、トラスティベレにある「サンタ・マリア・デッロルト教会:菜園の聖母教会」 Chiesa di Santa Maria dell’Orto(私は行ったことがない)。

 どこにあるのかググって見たらやたら写真の多いブログに行き当たった。筆者(たち)は不明。「ローマの教会巡り19,サンタ・マリア・デッロルト教会」(https://luca-signorelli.blog.jp/archives/30123406.html)。教会の位置は有名なサンタ・チェチリア教会の背後(西)だった。

 イタリア語版ウィキペディアによると、2012年まで日本人カトリック国民教会il tempio di riferimento per la comunità cattolica giapponese di Romaだった由。これは知らなかった。おそらくこの関係が発掘され、その400年目にあたる1985年を機縁としてのことだったのだろう。ブログで遣欧使節の一人ジュリアーノ中浦の肖像画(2009年、三牧樺ず子作:彼はイエズス会神父となり65歳で殉教)が飾られているのもそのつてだと思うが、そもそも日本人信者そのものが少ないし、国民教会の件は上記ブログにも、若桑女史の著作でも付言されていないくらいだから知名度も今一だったのだろう、1985年の400年祭が過ぎ去って熱意もすぐに薄れてしまったと思われる。

 逆に、ジュリアーノ中浦を中心に紹介しているブログが以下。そこには遣欧使節とこの教会のつながりのエピソードもかいつまんで書いてある。http://bibitaro.blogspot.com/2017/02/santa-maria-dellorto-in-trastevere.html

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季節の果物、タロッコ・オレンジぃ〜

 早いものでもう20年以上も前になってしまったが、イタリアに一年間滞在すると短期の旅行とはひと味ちがった思い出を持つことができる。

 そのひとつが季節のたべもので、9月下旬だとフンギ・ポルチーニである。当時は大げさではなく直径20cm級のソテーが、一万2千リラだっけで食せて、大感激だった。最近は小ぶりになって最初の感激を思い出すこともできない。ま、香り的には日本の松茸といったところで、食感の歯ごたえがよくて、あれっと何かを思い出したりもする人もいる、ようで (^_^; これも土産用の乾燥品があるが、あれはまあ代用品もいいところで、生食には遠く及ばない。香りも付けているらしいし。

秋になるとメルカートにこれだけ売る店が登場する。食通の方は、虫が入っていないものを選べとおっしゃるが・・・

 実は秋の味覚にもうひとつ、タルトゥーフォ(トリュフ)があるのだが、私のような新参者にはそのかんばせはよくは分からないので、パス。

タルトゥーフォには白と黒がある

 今年ぼんやりとしていて(はい、惚け老人です)、すんでのことで時期を逸するところだったが、昨晩「鶴甁の家族に乾杯」だっけの総集編見ていて、危うく思い出した、通称ブラッド・オレンジ。今日慌ててウェブで注文した。ふぞろいの家庭用5kg、送料込みで¥5600。愛媛から届く。

日本産は表皮が厚めで、色の入り方が少ない気がする

 これは現地イタリアでも3月からせいぜい5月までのもので、シシリー原産。私は吸血鬼ではないのでブラッドという名称は嫌いで、タロッコと呼んでいる(もっと色の濃い品種はモロというらしいが、日本ではみかけない)。初めて生食した時の感激は忘れられない。当時、普通のオレンジ・ジュース(ズッコ・ダランチャ)も美味しかったが(バールで、冷やしもしていないオレンジを、3コくらい半分に切ってぎゅっと絞って、夏でも氷を入れずに、出てきていた)、タロッコは独特の甘さがクセになります。私だったら、冷蔵庫に入れて年中出すようにするのだけどなあ、と思ったことだ。還元ジュースはあるけど、あれはぜんぜんまがい物。生の面影などまったくない。

 そうそう、思い出した。二度目のローマ長期滞在中に日本から研究仲間では名の知れた先輩の古代ローマ史研究者が来られたので(但し,イギリス滞在経験者)、我らがコンドミニオに泊まってもらい、珍しいだろうと思って「シシリア産のオレンジです」と言って1つ差し上げた。翌朝「どうでしたか」と聞いたら、答えはなんと「腐っていたので捨てました」と。場合によっては一面にではなく普通のオレンジに部分的に赤紫がはいっているから腐っていると思ったらしい。不意を突かれ毒気も抜かれて、私は何も言えなかった。絶句であった。

 研究者は机の上で文字ばかり扱っているから、外国の現地の庶民の実生活には疎くても全然平気だ。そんなこと気づきもしない(ちなみに、私は大学院入試での第二外国語のドイツ語で、日常品とかの単語が分からず苦戦した)。それで天下国家を論じている気になるのはなんだか滑稽なことで、こりゃ自戒せねばと思ったことだ。私が坂本先生のエッセイ好きなのは、庶民目線でイタリアを論じているからである。

【追記】4/25に届いた。実際にはこんな調子の色め。

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世界キリスト教情報第1578信:2021/4/19:ノートルダム大聖堂他

= 目 次 =
▼韓国の新規コロナ感染者は700人前後で高止まり
▼韓国の新規コロナ感染者、全広域自治体で発生続く
▼米福音派に反コロナワクチンの風潮も広がる
▼シン・フェイン党、IRAのマウントバッテン卿殺害を謝罪
▼コロナ禍でバチカンの財政が緊縮に迫い込まれる
▼名誉教皇ベネディクト16世、94歳の誕生日
▼パリのノートルダム火災2年、大聖堂保全大詰め

 今日はバチカン財政と最後のを紹介する。

◎コロナ禍でバチカンの財政が緊縮に迫い込まれる
【CJC】欧州各国が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で悪化した経済を立て直すために財政支出を増やすなかで、バチカン(ローマ教皇庁)は観光客や寄付が激減、痛みを伴う緊縮財政に追い込まれている。英経済専門メディア『フィナンシャル・タイムズ』(FT) が紹介した。
 教皇フランシスコは「新型コロナウイルス感染症がもたらした公衆衛生上の緊急事態がバチカンのあらゆる収入源に悪影響を及ぼしている」として、4月から全枢機卿の給与を10%引き下げると発表した。教皇は給与を受け取っておらず、対象にならない。
 国際通貨基金(IMF)は、パンデミックが経済に及ぼす悪影響を緩和するため、ユーロ圏諸国に国内総生産(GDP)比3%相当の政府支出積み増しを求めた。
 バチカン財政の責任者フアン・アントニオ・ゲレーロ・アルベス財務事務局長官は、2021年の支出は「近年のバチカンの歴史で最少規模になる」と言う。
 他の欧州各国が大規模な財政出動を行っているのと対照的だ。同氏は、バチカン財政の規模が極めて小さく税収もないため、他国のような対策は取れないと認めた。
 「普通の国であれば借金を増やして財政出動できるだろう」と同氏。「我々の場合、寄付金が入ってこなければ、支出をできる限り抑制する以外にできるのは準備金を使うことだけだ」という。
 カトリック教徒からの寄付金が減っている。世界で不動産や商業活動からの収入も減っており、寄付金を除くと、今年の赤字は8000万ユーロ(約100億円)に増えるという。赤字は準備金で補填(ほてん)される見通し。
 バチカンは宗教行事開催費用をまかなうため外部からの寄付に期待している。
昨年、教育関係の慈善事業担当に任命されたアンジェロ・ビンチェンツォ・ツァーニカトリック教育省次官は、「バチカンにはほとんど何もない。外部からの支援を模索している」と認めた。□
◎パリのノートルダム火災2年、大聖堂保全大詰め
【CJC】2019年4月のパリ・ノートルダム大聖堂の火災から15日で2年。現場では新型コロナウイルス流行に伴う制約の中で進められてきた建物の保全作業が大詰めを迎えている。今年の冬には修復作業に入る見込みで、「24年
に、信者たちへ内部を開放する目標は達成できる」と、政府は明らかにしている。
 火災前に尖塔(せんとう)の改修作業用に設置され、火災後も大聖堂の上に残ったままになっていた金属製の足場の撤去が昨年11月に完了し、建物崩壊の危険を回避した。現在は大聖堂の内部に足場を組み上げ、石造りのアーチ天井が崩れないよう木材で補強する作業が進められている。夏には保全作業が全て完了する予定。パリ発共同通信が報じた。
 当局は昨年7月、焼け落ちた木造の尖塔を元の素材で復元することを決定。必要とされるナラの材木が国内各地で伐採され、今後1年~1年半かけて乾燥させる。□
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スペイン出土の木製金庫復元作業

 ポンペイ方面でも類似品が出土しているが、スペイン・メリダのCasa del Mitreoで1994年に、後4世紀の貴重品を入れた木製の「Arca Ferrata」が、保存状態がよくないが、ローマ時代に火災に遭った豪華なvillaから見つかっていた。

 2017年にそれを遺跡からとりだして、正面のみ復元されたらしい。この木製金庫は現況では約3m×1.5mの大きさであるが、二階の崩落により押しつぶされたので元々の大きさは不明の由。

 こういった調度品は、多くの場合、家の所有者が訪問者を迎えた応接室に配置されていた。盗難を避けるために、鉄の釘を使って壁や地面に貼り付けていた。それらはしばしば加工された金属で華やかに装飾されていた。

出土状況
取り出し作業中
:
多分こんな感じだったはず:Zaragoza博物館所蔵のTarazona出土のArca ferrata(そこには4例ある由)

https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/04/remains-of-wooden-safe-excavated-from.html

【参考事例】以下は、Torre Annunziataにあるオプロンティスの、Lucius Crassius TertiusのVilla B出土のStrongbox。この遺跡は1974年の中学校体育館建設中に偶然発見された。そこには前2世紀創建商業取引の建物があって、海にも接していたらしい。ちなみに発掘した時、一説ではすでに中は空だった由。避難するとき家人が持ち出したのだろうか(別説では200点以上のコイン、金銀の宝飾品が入っていた)。発見場所は列柱廊peristyleであるが、それはないので、おそらく上階から落下したものと考えられている。

https://exhibitions.kelsey.lsa.umich.edu/oplontis-leisure-and-luxury/strongbox.php

追加情報:A.Angela,I tre giorni di Pompei, Milano, 2014の口絵で以下の画像を見つけた。エルコラーノ発見と表記されているので、上記のコインとは別かも知れないが、たぶんこんな溶解状況での出土であったのではなかろうか。

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非番のカラビニエリ、ベルギーで盗品を見つける

 2011年11月にローマ郊外のVilla Marini Dettinaの考古遺跡から盗まれた紀元前1世紀の大理石彫像(頭部がないTogatus)を、非番のカラビニエリ(原意は騎兵隊、現在は武装警察隊としてテロ対策や対マフィア取り締まりを主務としているが、部署に美術遺産保護部隊もある由)所属で別の仕事でブリュッセルに配属されていた2名がたまたま不審な彫像を骨董街のサブロン地区でみつけ、帰国後に手配データと照合して盗品と判明。10万ユーロ(1千200万円)の価値ありとか。

https://www.classicult.it/tag/villa-marini-dettina/

 現品はすでに2月にイタリアに返還されているが、スペイン人の偽名を使ってのイタリア人による違法取引だったらしい。

 あちらでは手柄を立てた関係者をこのように記念写真的に写すのが通例。

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カラヴァッジオ再発見か:飛耳長目(80)

https://elpais.com/cultura/2021-04-08/cultura-declara-inexportable-un-cuadro-que-iba-a-subastarse-en-madrid-al-sospechar-que-puede-ser-de-caravaggio.html

 先週木曜にスペインのマドリッドで競売にかけられる予定だった絵画が、長らく所在不明のカラヴァッジオMichelangelo Merisi da Caravaggio(1571-1610:40歳で死没)の作品の可能性ありとされ、スペイン政府によって国外持ち出し禁止(inexportable)が宣言され、直前にオークションからはずされた。当初17世紀のスペイン画家José Riberaの弟子作とされ、最低入札価格1500€(約19万円)だったが、真作だと一挙に評価額は億ランクとなるはず。画題は「Ecce Homo」で、文献的には1631年の目録と1659年の所有者Castrillo伯爵のスペイン旅行での帯同が確認されていた作品の由。

左、競売カタログ掲載の絵:かなり汚れ保存状態は悪く後世の修復も受けているらしい;右、マドリッド美術館所蔵「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」、真作の根拠となった赤マントの色組成に注目

 これから厳重な鑑定を受けるので、真贋確定には相当期間かかるものと予想される。

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世界キリスト教情報第1577信:2021/4/12:H.Küng師死去

= 目 次 =
▼ハンス・キュンク神父死去、教皇の無謬性に関する見解で物議
▼北アイルランドで連日暴動、10日間で警官70人以上負傷
▼ハイチでカトリック教会の聖職者7人誘拐される
▼ブラジル南部で新たなキリスト像の建設進む
▼カラバッジョの失われた傑作か、スペイン政府が競売を阻止

 今日は、私の若い頃に大きな影響を与えた人物の死亡記事を紹介する。研究者かくあるべし、と思う。

Hans Küng(1928/3/19-2021/4/6)
◎ハンス・キュンク神父死去、教皇の無謬性に関する見解で物議
【CJC】スイス出身の司祭、神学者、作家のハンス・キュンク神父が4月6日、ドイツ南西部チュービンゲンの自宅で死去した。93歳。同神父が創設し、会長・名誉会長を務めた「グローバル・エシック・ファウンデーション」がフェイスブックで明らかにした。死因は伝えられていない。晩年はパーキンソン病で公の場に姿を見せることはなかった。ロンドンに本拠を置く「独立カトリック・ニュース」(ICN)の報道などを紹介する。
 1928年3月19日にスイスのズールゼーで生まれたキュンク神父は、教皇ヨハネ・パウロ2世や教皇ベネディクト16世を最も鋭く批判した人物の1人。声明や著書の中で、司祭の独身義務、女性司祭の禁止、改革への抵抗、秘密主
義、透明性の欠如、女性蔑視など、バチカン批判を展開した。
 1960年代にチュービンゲンで教皇ベネディクト16世、当時のジョセフ・ラッツィンガー神父と一緒に働き、学んだ経験がある。ラッツィンガー神父とともに、1962年から65年にかけて開催された第2バチカン公会議では、司教団に助言を与える最年少の神学専門家の1人であったが、公会議後間もなく、教皇の無謬性についての見解を示し、物議をかもした。
 そのため、1979年にバチカンからカトリック神学教授の免許資格「ミッシオ・カノニカ」を取り消され、カトリック大学でカトリック神学者として教えることができなくなった。以後、チュービンゲン大学でエキュメニカル(キリスト教一致運動)神学の教授を務め、1996年に退職した。
 ラッツィンガー枢機卿がローマ教皇に着座した数カ月後の2005年、ラッツィンガー枢機卿とキュンク神父は、ローマ郊外カステル・ガンドルフォで数時間一緒に過ごしたという。バチカン報道官によると、教皇とキュンク神父は「この会談の場では、教義上の問題について議論することは意味がないということで合意した」という。その代わりに、キュンク神父の最近の研究テーマである、すべての宗教的伝統を取り入れた「グローバルな倫理」を発展させる可能性と、キリスト教信仰と科学の間の対話の二つに焦点を当てた。
 2011年に引退した後、チュービンゲン大学に「グローバル・エシック・ファウンデーション」を設立し、「宗教間の平和がなければ、国家間の平和もない」という確信を示した。
 2019年、資格免許「ミッシオ・カノニカ」取り消し40周年を迎えたキュンク神父は、ドイツのカトリック・メディアに、教皇フランシスコと手紙のやりとりをして、教会法上は非公式に回復されたと感じている、と語った。
 邦訳書に『公会議に現われた教会』(1966年、エンデルレ書店)、『ゆるぎなき権威』(1973年、新教出版社)、『教会論』上・下(1976・77年、新教出版社)、『フロイトと神』(1987年、教文館)、『世界諸宗教
の道──平和をもとめて』(2001年、世界聖典刊行協会)、『キリスト教思想の形成者たち』(2014年、新教出版社)、『キリスト教は女性をどう見てきたか』(2016年)などがある。□

 もう一人の忘れがたい人物、イヴァン・イリイチIvan Illich(1926-2002年:享年76歳)についても触れる機会を持ちたいものだ。

こうして並べてみると、二人ともグレゴリアナ神学大学出身者だ

 もう一つ、個人的興味あるカラヴァッジョについては別稿で触れる。

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