月: 2021年2月

ポンペイ近くで馬車発掘

知人からの連絡で知った。2021年 2月27日発表:ポンペイ遺跡の北にあるCivita Giuliana(Porta Vesuvioから直線で750m)で発見。3年前に3頭の馬が発掘された厩舎の玄関から出てきた由(http://pompeiisites.org/en/press-kit-en/the-excavations-of-civita-giuliana/;https://gigazine.net/news/20181225-pompeii-third-thoroughbred/)。

日本語で読める記事と動画:https://www.afpbb.com/articles/-/3334024

黄色線がポンペイ遺跡、上の黄色〇印が発掘地点のCivita Giuliana
こういう青銅製装飾から、結婚式で使用された馬車と想定されているようだが、さて

【追伸】以下、在イタリアの藤井慈子氏による新聞記事等からの続報。「座席から麦の穂の痕跡が確認されたことから、Cerere(豊穣の神ケレス)信仰とかかわる可能性が浮上し、このCenereがポンペイではVenere(ウェヌス)と共に信仰を集めていたことから、ケレスとウェヌスなどにかかわるsacerdotessa (女祭司)が同別荘にいたのでは、という説のようです。ただ単純に豊穣のシンボルである麦の穂が、祝祭(結婚式?)の前か後に残っただけではという説も出されています。私的には、後者の方が自然のように思われますが(ケレスとウェヌスの 信仰にかかわるものなら、青銅製メダルの浮彫に、それらの図像が施されてもいいような、、、麦の穂だけでここまでいうのかな?という印象を受けました が、先生はいかがでしょうか)。また、同じような移動用の馬車の出土は、Casa del Menandroから1点、Villa Ariannaから2点確認はされているが、とても比較の対象ではなく、唯一類例として挙げられるとしたら、15年前にトラキアの墓から出土したもの(南ギリシア、ブルガリアとの国境付近)があるそうです。」

【続報】その後、発掘がすすんだようだ。以下の画像の次に3D映像も(ここから行けるはず。拡大してみるとすごい迫力!:https://twitter.com/pompeii_sites/status/1365735037262585857?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1365735037262585857%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fimperiumromanum.quora.com%2F%3Fni%3D0nsrc%3D4snid3%3D18406889849tiids%3D22748989:2021/2/28)。

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うんちの行方と緊急事トイレ:トイレ噺(24)

 最近出版されたトイレ本。新コロナのさなか、色々現地調査しての報告が主体で、災害時など現代的な課題に対して具体的な数字をあげ、提案していてくれているのがいい。本書の最大特徴は現場主義で、これまでの机上の空論の諸先生の作文にない臨場感を感じられることができた。私はこれ読んで、下水道の合流式と分流式の問題点も判明して、すっきり。市場的にはTOTOが一人勝ちしている状況の中で、本書ではLIXILの先端的な試みが目立つのは頼もしい。速読可。

 私もこれを読んで、とうとう簡易トイレを購入することにした。各種ググって見ると、凝固剤や臭気の問題があるようなので、若干高めのものにしたが、実際使ってみないとわからんなあ。夫婦二人で一週間を目安に100回分、保存15年とかで、まあ我ら夫婦にはこれで十分かと、あ、保存的にね(直後、トイレに行ってタナを見たら、すでに別のメーカーの50回分を購入済みだった:こりゃもう認知症じゃ〜。ま、多々益々便ず)。

 うちの嫁さんは、地震で壊れた家の中に取りに入れるの?、あぶないじゃないの、とネガティブだが、生き残った場合を想定してあれでも準備しておかないとね。避難所のトイレ待ちなんかすごいらしいし。

 この本には、その他にも緊急事における「マンホール・トイレ」の情報なんかもあって、有用である。下水用マンホールの下は下水道に直結なので、一応(耐震化する必要あり)問題なく使えるわけだ。

個人用にも9万円弱で入手できるが、勝手に設置はできないだろうし

 こんなものもみっけ。実はイタリアでナヴォーナ広場に面した留学生対象の施設に1年間いたとき、同階居住のアメリカ人女性は朝大学に登学する前にシャワーを浴びるので、二人連続して使用された場合(その階には我ら三名に共用バスルームが一つしかなかった:あとで考えれば別の階にいけばいいだけのことだったのかもだが)、我慢できずに、小はペットボトルを切って、大は黒のゴミ袋をゴミ箱に二重に重ねて、対応したことが一度あったので、まあ想定内:もちろん大は例の共同ゴミ箱に生ゴミとして棄てましたが、何か問題が? (^^ゞ。

左がペットボトル利用の簡易小用器;右はイタリアの街頭の各種分別ゴミ箱:ゴミをいつ捨ててもいいので実に合理的、これを収集車が早朝に起重機で持ち上げてゴミを収集していくので、結構な音がする
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アトス島で女性の骨出土:遅報(69)

 2008年、動物でも女人(雌)禁制が600年間守られてきた聖山アトスに(例外はネズミ駆除の雌猫のみ)、まちがって女性が4人上陸してしまった(https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-31965520080527)、という報道を知ったので、ぐぐってみたら、もっととんでもないことが・・・。

 これまでも女性ジャーナリストが変装して侵入していたことはあったようだが(4世紀以来、12回女性入山が確認されてる由)、パントクラトル修道院の礼拝堂の修復中に、床下から多くの人骨が出てきて、形状的に女性のものと思われる骨が含まれていた(2019/12/24の記事:https://news.livedoor.com/article/detail/17572522/)。

 DNA鑑定も時代確定もされていない段階での情報なので確かなことは不明としか言いようもないが、記事では、女性修道士がいたのかという可能性に言及していた。私的には、ひょっとしたら女性寄進者が死後の埋葬を望んだ可能性もあるような気がするが、どうだろう。

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世界キリスト教情報第1570信:2021/2/22

= 目 次 =
▼「世界ラジオの日」に「独特のメディア」と教皇ツイート
▼ニコライ大主教命日記念しモスクワの教会で日本語礼拝
▼教皇、四旬節初日に「灰の水曜日」のミサ
▼イタリアで昨年上半期に婚姻と離婚が大幅減少、コロナ影響か
▼新規感染ゼロでも台湾はマスク着用「継続」呼び掛け
▼バチカンがコロナ禍で赤字拡大の見通し
▼バチカン市国の新しい教皇代理にガンベッティ枢機卿

 今回はイタリアでの結婚・離婚の件を紹介する。

◎イタリアで昨年上半期に婚姻と離婚が大幅減少、コロナ影響か
【CJC】ローマ発共同によると、イタリア国家統計局は2月19日までに、同国での昨年上半期の婚姻と離婚の件数が前年同期比で大幅に減少した、と発表した。新型コロナウイルス対策のため全土で長期間にわたりロックダウン(都市封鎖)が実施されたことが影響したとしている。
 統計局の暫定的データでは、昨年1~3月の婚姻と離婚件数はそれぞれ約20%減少。同4~6月では婚姻が約80%、離婚は約55%減った。□
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騙された?バチカン

 私は以前(2019/7/8)「バチカンに勝算あるのか」と書いたことがあった。バチカンがこれまでの方針を変えて、中国に歩み寄りの姿勢を取りだしたことに懸念を抱いたからである。この懸念がどうやら現実のものとなったかもしれないのである。

 2020/2/17付で、これまでもバチカン事情に多く触れてきているブログが「バチカンは中国共産党に騙された!」と書いた(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52299680.html)。興味ある向きにはお読みいただきたい。その記事の中に「バチカンは過去、共産主義に騙されてきた歴史がある」、今回もそうで、だが「バチカンは今回の中国側の対応に対して沈黙している」として不満げである。「バチカンは今こそ、中国共産党政権の悪魔性を世界に知らせるべきだ」と。バチカンにはまだ勝算があるのだろうか。

 これの書き手には以下の記事もある。「政治家が好む「会食文化」は廃れない」(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52299885.html)。なかなかエグい内容だった。

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渋沢栄一の毀誉褒貶:遅報(68)

 NHKで清々しく爽やかな雰囲気が振りまかれている。と、むらむら天邪鬼が・・・。知人からご教示頂いた、黒岩涙香『弊風一班・畜妾の実例』社会思想社、1992(原典は「萬朝報」1898年)、を入手できた。「ちくしょう」と発音してみると身も蓋もない。もちろんその効果を織り込み済みの表題だろう。渋沢は、p.37に第90番目に登場する(掲載総数は延べ510人:大まかに言って著名人が早めに出てきている)。

身長は、153cmだったらしい。ただ160.6cmという別説もあって、これだと、伊藤博文と同じになるが、さて:http://irisio.seesaa.net/article/101774731.html

 「(九〇)渋沢栄一は、深川福住町四番地の自宅に大坂より連れ来りし田中久尾(二十八,九)という古き妾あり。日本橋浜町一丁目三番地の別宅には元と吉原仲の町林家小亀こと鈴木かめ(二十四)なる妾を畜う。」

 こんなに番地や実名書かれての暴露記事、いうなれば現代の文春爆弾で、私だったらたまらんが、当時は当事者にとってどうだったのだろうか。彼は1840年生まれで1931年に91歳で死亡しているから、この文面のときは58歳。それで思いついたので例の山田風太郎『人間臨終図鑑』を見てみた。第4巻のpp.370-372で、まずプラス面を書いた後、最後に以下が。「ーーとはいえ、きれいごとばかりで大富豪になれるわけがない。女道楽にかけても渋沢は大変な色豪で、そのためばかりではないが、岩波茂雄に勧められて『渋沢栄一伝』を書いた露伴は、以後渋沢の名が出るたびに不機嫌な顔をした」とある。幸田露伴の本も欲しくなって調べたら、岩波文庫で読めることを知った。また渋沢の自伝『雨夜譚』も岩波文庫にあるようなので、どこまで書いているのか比較したくなったが、そんなことやってる暇はないので、だれかやらんかいな〜。大学のレポートには最適だと思いますが。

 いずれにせよ、女権論者の皆々様がわが祖国の最高紙幣や大河ドラマへの彼の採用に対しまったく非を鳴らす気がないようなのは、たいへん心の広いことである。わが敬愛するイタリア並になったことを言祝ぎたい。

【追記】黒岩をザッと読んでいて色々驚いた。森鴎外(1862-1922)は『舞姫』で留学中のドイツ人女性の話を書いていたが、どうやら留学から帰るなり十八、九歳の児玉せきなる女性(当時三十二歳)を深く寵愛し、細君を離縁し本妻に直そうとしたが、母によりその母なみ(六十歳)ともども外妾とすべしと言い渡され、すぐ近所に別居せしめ、爾来母より手当が送りつけられた、と。なんというマザコン、いや明治の母刀自はしっかりしていたなあ。

 また、ローマ法がらみで私が知っていた末松謙澄(1855-1920)も思いがけず掲載されていて、彼は正二位勲一等子爵だったが、妻・生子は伊藤博文の次女で我がまま放題だったので敬遠し、「妻の厳重なる監視の目を潜り日本橋区箔屋町七番地の絵草紙屋錦華堂浅井一忠の娘けい(二十三)を妾とし、檜物町の春の屋を以て会合の場所とせり」(p.135)、と。

 まあ彼ら両名は一人を囲っていただけのようなので、私からすると、表社会の体面から解き放され、安らぎを求め、素の自分に帰れる場を求めてのことだろうと、なんとなく分かる気がしないでもないが、当たっているだろうか。なに、「家政婦は見た!」の第15作「財界一族の虚飾の争い」(1996年)の再放送を見ての思い付きだが。

【補遺】このブログを読んだ後輩からメールが来た。「黒岩涙香の記事、当時は、この記事に名前が載ることこそ名士の証として、 自分を載せてほしいと要望が殺到したらしいですよ」と。それでそこで紹介された以下を発注した。杉岡幸徳『世界の性習俗』角川新書、2020年。その箇所はpp.156-7。文脈に沿ってまとめると、黒岩は妾制度の猖獗に義憤を感じて書いたのだが、彼の思惑と真逆に「この記事に名前が載ることこそ名士の証、ということで、「早く俺の名前も載せてくれ」「なぜ吾輩を取り上げてくれないんだ」などという要望・苦情が殺到したのです」という仕儀に。この事例を根拠に、著者は、最近の日本での「不倫」騒動の偽善性を指摘さえしているのである。この著者によると、どうやら私もごく最近の風潮に毒されてしまっていたようで・・・、この点は否定すべきもないか。

 ただ著者の筆致は私にはいささか典拠的にいい加減な印象を受けた。まあ七割引きくらいの信頼度で読むのがいい感じではある。というのも、情報のほとんどが他文獻からの孫引きで、しかもいわゆる未開民族の奇習を超時代的に根拠にしているからである。私が現役中に必読書に推奨した赤松啓介は自らの体験談を書いているわけで、そこが説得力の違いのような気がする。

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聖フィリッポと聖小ヤコブの聖遺物調査:予想通り残念な結果

 【2021/2/1発信】イタリア・ローマのヴェネツィア広場から発して南北に突っ切っている直線道路がコルソ通りだが、その一本東側の大通りを入って右側奥に巨大な列柱廊が特徴の教会がみえる。これが聖十二使徒教会 Basilica dei Santi XII Apostoliで、500年間フランシスコ会厳格派(コンベンツアル)の拠点となっている。

        ↑コルソ通り    ↑聖12使徒教会      

 そこに保管されてきた聖遺物が、後6世紀以来、十二使徒のうちのフィリッポと小ヤコブのものと伝承されてきた。具体的には、小ヤコブの大腿骨破片と、フィリッポのミイラ化した足破片と頸骨破片である。これらがいつ、どこから将来されたのかという聖遺物の移葬事情は不明である。今回、南デンマーク大学教授Kaare Lund Rasmussenを中心にした調査団が聖遺物調査にチャレンジした。その結果は以下のようだった。

左、小ヤコブの大腿骨断片関係、右がフィリッポのミイラ化した足

 フィリッポのものは、除染がむつかしく、放射性炭素年代測定できなかった。

 小ヤコブの大腿骨の年代測定には成功し、後214-340年と数字が出た。よってこの骨は小ヤコブのものではなかったわけである。ラスムッセン教授は、誰の骨であったのかは不明であるが、小ヤコブの骨と信じていずれにせよキリスト教徒の墓地から採取されたに違いない、と話している。https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/02/scientific-investigations-of-believed.html

【付記】この教会の祭壇前に巡礼者用の地下クリプトへの階段がある。そこにはカタコンベを再現した碑文やフレスコ画がもっともらしく飾られていて、アッピウス街道まで足を伸ばせない観光客にはそれなりに雰囲気を楽しむことができるので、ぜひ見学してほしい。

上からクリプトを見下ろす
あたかも、カタコンベのごとし

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世界キリスト教情報第1569信:2021/2/15

 日付がおかしいなと思っていたら、もう一通届いた。

= 目 次 =
▼ミャンマーで国軍クーデターへの抗議デモ続く
▼「福島原発汚染水の海洋放出反対」で韓国司教協委が日本の正平協と共同声明
▼韓国が新型コロナ営業規制を一部緩和
▼バチカン放送開始90周年に教皇「記憶を守り、未来を見つめて」
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世界キリスト教情報第1568信:2021/2/8

= 目 次 =
▼韓国で教会関係の集団感染続く中、丁国務総理が指導者たちに防疫協力要請
▼韓国の新規コロナ感染者が3日連続で300人台
▼教皇、シノドス事務局上級職に女性を初任命
▼洗礼後に乳児死亡、肺に水でルーマニア正教会に批判
▼大聖堂建設が文化財破壊招く、とキプロス正教会への抗議激化

 今回は時節柄、以下を紹介。

◎教皇、シノドス事務局上級職に女性を初任命
【CJC】教皇フランシスコは2月6日、カトリック教会の慣習を破り、シノドス(世界代表司教会議)事務局次長を2人任命したが、その1人に初めて女性ナタリー・ベキャール氏(52=フランス人)を任命した。
 シノドス事務局長のマリオ・グレック枢機卿は、今回の任命について、「教会内の判断と意思決定の過程で、より多くの女性を参加させたい」という教皇の意向を表していると語った。事務局次長は投票権を持つとされている。
 ベキャール氏は、フランスを拠点とするザビエール姉妹会所属、フランスの著名なビジネススクール、HEC(パリ経営大学院)で経営学の修士号を取得、米ボストンで学んだ経験を持つ。2019年からシノドス顧問を務めていた。
 シノドスは投票権を持つ司教と枢機卿が主導し、投票権を持たない専門家らも参加する。次回開催は2022年秋の予定。□
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今さらですがテレビの虚構性:飛耳長目(75)

 最近届いた『UP』2021/2月号に以下があった。塚谷裕一「テレビ番組における虚構とサイエンスコミュニケーション」p.7-15。一種のやらせがどこまで許されるか、という問題が主題なわけだが、その中でテレビ業界ではかなり杜撰な事前調査しか行わないで、最後の詰めになって専門家のお墨付きをほしがって連絡があり、こちらが疑問や問題点を呈するととたんに連絡が途絶える、というエピソードが述べられていた。

 その実例が註記されていて、さてこの小論が出たので削除されかねないので(なにせアップ先が一応大学のHPだし)見るならいまのうちにと行ってきた(https://kindaipicks.com/article/001736)。結局資料提供者は「自称〇〇家」にすぎなかったわけだが(端的に言えば偽者)、それが分かっても番組は放映され、こうして輝かしい卒業生として紹介されている現実がある。所詮バラエティ・レベルなので一過性的に視聴率さえ稼げればそれでいいんだ、というわけなのであろうが、大学のHPに掲載されるとなると、それでいいのかというわけ。登場人物にとってはテレビはもちろん商売のPRなのだし。

 塚谷先生ほどではないが、私にもこういった連絡があった経験があって、下請けなのは明らかなのに堂々とたとえば「TBSです」と名乗ってくるのだが、質問内容は、私に電話するまでにせめてウィキペディアくらいは調べておいてよ、というレベル。

 しかし、こういうレベルで番組が制作・放映されているとなると、問題だと思う。私にしたところで自分の専門領域なら判断がつくものの、別分野であれば易々と誤情報をそのまま受け取ってしまうはずだから。その意味でこのブログだってその筋の専門家からしたら誤解と嘘だらけかもしれない。いや、絶対そうに違いない。

 たとえばNHKの大河ドラマにしても、史実を曲げてでもドラマチックに構成しないと面白くなくて視聴率は稼げない。戦国時代に日本には本来の意味での騎馬軍団は存在しなかったが、戦闘シーンで騎馬隊がどどっと走らないと迫力ないし、馬だってテレビ映りのいいアラブ馬(体高140㌢)やサラブレッド(体高160-70㌢)ではなく、せいぜい体高120ー130㌢台(ポニー・レベル)の短足胴長の在来馬では、御大将が騎乗したところで当時はともかく現代では絵になりゃしないのだ。騎乗者の体格は確実に大きくなっているのだし。赤穂浪士の敵討ちにしても、人々の共感を呼び起こすツボを心得た講談調で、物語的に巷間に流布したものがまかり通るわけである。観客の涙を絞るのは事実ではなくて、涙のツボを押さえた物語なのである。

流鏑馬で走る在来馬の木曽馬

 だからつい思ってしまう。事実に基づくべき研究者はいったい何が面白くてやっているのだろうと。

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