新コロナ裏事情:飛耳長目(91)

 毎日新聞デジタル2021/7/13有料記事で「吉村知事に訴えた「父がコロナで・・・」議場で明かした大阪府議の決意」を読んだ。府議の父は、4/23にPCR検査で感染が確認され、息子は26-27日に12時間200回保健所に電話をかけたが一切通じず、ようやく通じても何も指示されず、30日には救急車を要請したが来ることもなく、5/1になってようやく搬送されたが、保健所からは重傷者対応はできないと断られる。5/9に別の病院に転送されてから意識を失ったが、ECMO装着は若い人を優先したいと言われ、そのまま一度も会えないままに19日早朝に死亡連絡があり、接触もできず葬儀もできなかった。

 うちの妻に言わせると、実はこのところずっと保健所組織は縮小されてきていたし、一般病院もすでに今回のような感染症に対応できる状況になかった、と。その裏には、我が国のような医療先進国では(もちろん、皮肉)現代においてもはや従来のような感染症流行はありえないという前提での規模縮小政策があったようだ。たぶん縮小時には文書的には「万一発生した場合は、臨機応変に対応いたします」といった類いの官製文言が挟み込まれていたに違いないが、次々人員・設備を削減していたのだから、実態は散々たるものになったわけ(慌てて増員したところで無意味な現実がある。以下参照、https://mainichi.jp/articles/20210715/k00/00m/040/328000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20210716)。

 かつて防疫は国防的視点からも重視されていたわけだが、まあここでも平和ボケが浸透していたということだろう。だからそれを是としてきた(目をつむってきた)我々庶民も、責任を国とか地方行政の不備になすりつけても問題は解決しない。現場が野戦病院化して重症者・高齢者は見捨てられても仕方ない、できれば期間限定で、という認識を承認ざるをえないのである、残念ながら。じっさいあれから三か月、重症者は確実に減少しているのが救いであろうか。

 高度経済成長期、国内の穀物自給率が低下していったとき、当時高名な経済評論家は、工業生産を高めてえた利益で穀物なんか外国から輸入すればいい、それが現実的政策なのだと宣うてあらしゃった。そんな楽観論でいいのかとノー天気な私風情でも疑問が頭をよぎったものだが、農協さんと一緒にむしろ旗立てて反乱を起こすこともなく(ま、あれこれ含めての大学反乱はやったが)、今日に至っているのだから、何をか言わんやダ。

 こんなこと書いているのも、昨晩だっけに、「NHKスペシャル 2030 未来への分岐点(​5)AI戦争 果てなき恐怖」と、小日向文世主演の「サバイバルファミリー」(2017年)を見たせいかもしれない。いざとなったら火起こしもできない現代人ってはたして人類といえるのだろうか、と現役時代授業で言っていた。そんな愚民とIT分野の二層断絶の現実。ま、もはや未来のない私にとって、歴史研究者として、たった500万年で消え去る運命を辿る人類の行く末を見届けられないのが残念であるが。恐竜は1億6千万年生き続けて現在化石が出ているわけだが、1万年後たぶん人類の痕跡はほとんど残っていないかもしれない。たまさか出てきても「あれはなんだ」と意味不明のオーパーツ(out-of-place artifacts)扱いされておわり、てなもんや三度笠。

【追記】上記NHKスペシャルの報道内容に対して問題を指摘するウェブ情報が出たので参考までに。ともかくこのような批判が公にされるのはいいことだ。渡部悦和「NHKスペシャル「AI戦争 果てなき恐怖」に異議あり」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66035:要登録)。ひと言で主張をまとめれば、NHKは言葉遣いで視聴者を煽っている、それは特にきちんと、人間の遠隔操作による攻撃型無人機と「完全自律型の致死性兵器(LAWS:Lethal Autonomous Weapon Systems)」を区別していないことで、いたずらに視聴者にAIの軍事利用研究まで抑制すべきだという印章を与えて問題だ、というものである。

 ド素人の私など、細かいことは抜きにして、AI「戦争」への対策が日本でも必要だ(それは当然AI兵器研究を前提としている)、というレベルの受け取り方だったのではないかと思うので(すなわち全否定ではない)、批判者の結論とそう違いがないような気もするが・・・。

 渡部氏は6/24に「日本全体が1発で麻痺、核より怖い北朝鮮の電磁パルス攻撃」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65788)をアップしている。私など、北朝鮮のミサイル精度はまだまだだと思っていたので(授業でも冗談半分に「市ヶ谷狙っていたミサイルが四谷に落ちてくる可能性」を喋っていた)、たしかにピンポイントでない電磁パルス攻撃のほうがよほど北朝鮮の軍事レベルに相応した攻撃だな、とこっちは納得せざるをえなかった。

 だがしかし、こういう軍事研究はやったらやったでそれをちゃんと規制する問題が生じてくることもたしかで、難儀なことだ。

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