「衰退途上国」なる言葉:飛耳長目(23)

 こういう言葉があるのを初めて知った。現在の日本を言い得て妙だ。私は経済音痴なのだが、古代ローマの衰退を考える意味でも追体験的なヒントになるかもである。https://www.mag2.com/p/news/435058

 そこでは、日経が1997年に2020年を予想していたのだが、状況は予想以上に悪化している、要するに何の手立ても功を奏していない、このままだともっと悲惨な状況になる、と論じている。過去30年間改善できなかったという事実の重たさを認識するとき、もう先が見えている、というわけだ。以下、引用する。

     最大の問題は、先進国時代の「贅沢な安全基準」「大き過ぎるインフラ」「要求の高い市民や消費者」といったものを抱えているために、ただでさえ過大となっている社会維持のコストが重くのしかかっているという問題です。

     これは、昨年秋の台風15、19、21号でイヤというほど思い知らされた問題です。とにかく、全体が大きく沈みつつある中で、部分的に過去の先進国時代の制度やインフラが残っていて、これが悪い作用を起こしている、その一方で過去の成功体験の延長上でしか発想できない…これが「衰退途上国の特徴であると言わざるを得ません。

 それにどう対応すべきか、筆者はまず「現状把握」が必要、として5つの問題を指摘しているが、私などいずれもいまさら間に合わないだろうと思わざるをえないのが、悲しい現実である。国民のメンタリティーすら問題視される場合もある。ローマ帝国の衰退でも同様のことが指摘されていたのであるが。

 しかし、逆転発想もありだと思う。(西)ローマ帝国が滅亡しても、どっこい帝国の故郷イタリア半島の人々は生き続けてきた、という当たり前のことを忘れてはならない。えてして対象を限定して論じ勝ちな研究者の視野には当該時代しか見えていないことが多いのである。現在に至るその後のイタリアの歴史を見れば明らかであるが、イタリア人は浮沈の波動を経験しながらも、彼らの経済力や資源、メンタリティがどうあれ、現在も生き続けている。国の滅亡は住民・民族の滅亡を意味していなかった。このことにこそ注目すべきだと私は思う。

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