広島サミットは失敗か

 5/20まで故郷に帰っていた。最初は雨が降っていたし、週末は市内の交通規制がうるさかったので、今回は寺参りはしなかったのだが(亡父の誕生日があったけど)、NHKの広島版を見ることができて、これって東京なんかにいたら見ることできなかっただろうな、と思うこともあった。

 被爆者一人と会う時間を含めてたかだか40分の(通称)原爆資料館訪問、そしてそこで何が話されたのかについての箝口令に(おそらく小役人によるこざかしい振る舞い:だけどこういう情報はあとからポロポロ洩れてくるものだが)、被爆者たちは冷たい行政の壁をまたもや感じ取ってしまったのだろう。そのあたりがストレートすぎるかたちで出た当日の生放送での小野文惠アナウンサーのあしらいは彼女ならではで、逃げもせずさすがだったが、本音では困っただろうなと想像する。

 広島市に本社ある中国新聞デジタルをみても、すでに「サーロー節子さん、広島サミットは「失敗」」といった記事が掲載されていて(https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/308690)、要するに、被爆者は核兵器の存在を認めた上での論義を容認することはできないという立場からするなら(私はこう考えるのは一部の被爆者と思っているが、マスコミは得てしてこの種の見解を採用しがちだ)、政治家たちの妥協だらけの言説など聞きたくもないわけであろう。しかし民主主義における政治とは妥協の産物なのだから、一歩前進のために三歩後退の連続だってありえるわけで、だからそのような性急な判断を下すのはどうかなと思う。それは核兵器禁止条約(2021年発効)批准問題の評価にも表れているが、核拡散防止条約(1970年発効)には日本も参加しているので、混同しないようにしたいものだ。実は私も混同していたのです。

 とまれ、サミットへのゼレンスキー・ウクライナ大統領の登場が、すべていいとこ取りして話題をさらった感がある。その嗅覚はさすがと言うほかない。このサプライズ企画の飛び入りで儀式的な会議の退屈さが、一挙にリアルな精彩を帯びることとなった(アメリカの策謀という説あり:「まるで「ゼレンスキー劇場」の広島サミット“失敗”に気づかぬ岸田政権の大罪」https://www.mag2.com/p/news/577124/4)。そのおこぼれで岸田首相の支持率が9ポイント上昇して45%となり、不支持率とはじめて拮抗するまでになった由であるが(https://mainichi.jp/articles/20230521/k00/00m/010/120000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailsokuho&utm_content=20230521)、まあこんな数字は一時のまやかし、ご祝儀に過ぎなくて、化けの皮はすぐはげるだろう、残念ながら。

 本日7:30から約90分のフジテレビの日曜報道は出色だった。なにせ映像の背景場所が広島市南区に辛うじて保存されてきた旧陸軍被服支廠倉庫内からで、そこで「平和都市」ヒロシマが実は日清戦争以降戦前においては「軍都」広島として著名であり、今般のサミットの会議が行われた宇品島などは、大陸に兵士を送り出す主要軍港だったことを想起させつつ、それを象徴しているのがレンガ造りの被服廠倉庫なのである、という幾重にも絶好のロケーションだったからである。

 同時刻の他の番組に出ていた政治評論家の宮家邦彦(栄光学園中高等学校第20期から東大)がいい指摘をしていた。そもそも2014年のロシアのウクライナ侵攻の時、日本は何の動きもしなかった。それが今回の侵攻の伏線になっているのだが、その時の日本の外務大臣は誰あろう岸田であった。その彼が今さらなにをしようというのか、と。その尻馬に乗っていうと、岸田は正確には広島出身でない。彼の父はそうなのだが、親戚に被爆者がいるにしても、彼は東京生まれ・東京育ちである。選挙区が親譲りの広島一区であるだけだ。

 で、ググって以下のような系図を見つけて驚いた。今回、全面批判していたサーロー節子さん、なんと岸田首相の遠いけどご親戚だったとは。出身高校は米国南メソジスト系プロテスタントの広島女学院中高等学校・同大学卒(地元では省略して女学院と呼んでます)。彼女、「核兵器廃絶国際キャンペーン」がノーベル平和賞を受賞したとき組織の一員として授賞式演説をしたこともあり、だからあんなふうに言えるのかな、マスコミがとりあげるわけだ、と。知らないことが多すぎる。そしてなんと世間は狭いこと(参照、八幡和郎『家系図でわかる日本の上流階級:この国を動かす「名家」「名門」のすべて』清談社Publico、2022年)。

 ただ彼女を含めた岸田家系図はこれひとつであった。むしろ宮澤喜一経由で・鈴木・麻生・安倍とのつながりのほうに世間の注目は向いている。

 ところで、原爆資料館で今回ただ一人で七ヶ国首脳に英語で証言した小倉桂子さんも、節子さんと同じ学歴である(彼女の亡夫は原爆資料館長だったので、コントロールしやすいと踏んでの人選か)。ここまで触れるとついでに、岸田総理の妻の裕子さんも女学院中高卒でありますと言っておきたくなる(彼女の出身大学はやはりプロテスタントのクエーカー系の東京女子大)。

 女学院、来年度の生徒募集は安泰だろうな、きっと(我が家の菩提寺は広電白島線終点前にある。あの電車に乗ると学校前の大きな看板がいやでも目に入るのだ)。

 2023/5/30:岸田の奥さまは広島に留まって選挙地盤と子育てに専念してこられた由だが、「バカ息子」がすっかり定着してしまった32歳の長男翔太郎騒動の顛末で、庶民の溜飲だけは確実に下がった感がある。しかし公用車使っての観光や買い物なんかはむしろ大使館のほうが率先しての忖度で、国会議員なんか平気でやっているのではと思ってしまうし、公邸での親戚コンパの写真がどうして文春に洩れたのか、つけ狙われて揚げ足をとられたとしか思えないので、当事者たちはさぞ不本意だろう。ま、衆愚政治の現代に生きるセレブとしては脇が甘かったわけだ。

 とはいえ、そもそも批判をよそに経験不足の息子を政務秘書官に任命してはばからなかった「バカ親」のほうが本当は問題だ。長男がダメなら替えもいるようなので余裕をかましている感じだが、3代目で家業が潰れるという格言もある。「石を投げれば世襲にあたる」とか「2世には負い目意識もあるが、3世にもなると特権意識ばかり」との揶揄もきこえてくる。かくしてぼんくらは自滅していくのが民主主義と信じたいところであるが、さてどうなるであろうか。山口二区の岸家もご同様なのだが、こっちはとりあえず世襲が成功したようでなんだかな。

 比較になりはしないが、私もある意味3代目なので家族メンタリティーの崩壊は実感するところがある。4代目は既得権に乗っかるだけで、切り拓こうとはしないものだ。創業者としての気概をもってほしいのだが、親はそうは思っても子にうまく伝わらないのだから、ま、その程度の雑魚血統だったと思って諦めるしかない。

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