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狩猟採取時代は平和だったか

 みんなも薄々は感づいていただろうが、日本の考古学者たちが当然のことのように主張してきていた仮説に対して、政治評論家?の杉山大志がベトーを提示したもの。詳しくは2022/11/17発信の以下のブログをお読み下さい。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72735?utm_source=editor&utm_medium=mail&utm_campaign=link&utm_content=top

 人類に戦争が生じだしたのは、農耕牧畜で収穫物の蓄財が可能となった(だから他集団を襲って、手っ取り早く強奪することも可能となった)、日本で言うと弥生時代以降で、それ以前の縄文時代までは、戦争などなかった、とする見解。まあマルクス主義的進化論やメルヘンチックで牧歌的な古代賛美がそこに通底していて、もともとは西欧の研究者が唱えていたが、あちらではすでに放棄されていた。

 武装した集団同士が交戦するのが戦争なので、そういった装備もなかった時代での私闘を戦争と呼べるのか、といった定義レベルでの逃げもあるが、殺人そのものは人類発生以来の習い性だったからには、まあ荒唐無稽といってよいだろう。

 こういう問題は、データが少ない時にはもっともらしく聞こえるが、証拠が出てくると当然のようにくずれていく。古代史においても他山の石として気をつけないといけないと思う。

 私には、縄文時代には気温が今より2 〜3度高かったので、北海道や東北も豊かだったという話の方に惹かれてしまう。

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世界キリスト教情報第1660信:2022/11/14:フランス教会の不祥事

≪ 目 次 ≫
▽教皇、ウクライナのシェウチュク首座大司教とバチカンで会談
▽「貧しい人のための祈願日」、教皇「闇に希望の光を灯し、福音の証しを」
▽仏カトリック教会、司教の性加害疑惑を公表=うち1人は現枢機卿
▽世界ルーテル連盟(LWF)第13回総会、来年9月にポーランドで
▽世界教会協議会(WCC)、信仰職制委ディレクターにジェフティク氏
▽尹大統領 雑踏事故受け宗教界の長老と相次ぎ面会

今回は3番目を紹介する。

◎仏カトリック教会、司教の性加害疑惑を公表=うち1人は現枢機卿
【CJC】フランス司教協議会は11月7日、過去に性加害に及んだり、虐待事件の報告を怠ったりした疑いが持たれている同国の現・元司教が11人に上ることを明らかにした。うち1人は現枢機卿で、30年以上前に未成年者を暴行したと告白したという。AFP=時事通信が報じた。

 11人はいずれも、刑事訴追や教会による懲戒処分の対象となる。元司教6人はすでに仏当局や教会の司法機関により訴追されており、うち1人はその後死亡したという。

 司教協議会の会長を務める北東部ランスのエリック・ドムーランボーフォール大司教は記者会見で、長年にわたりボルドーの司教を務めたジャンピエール・リカール枢機卿(78)の書簡を公表した。リカール枢機卿はその中で「私は司祭だった35年前、14歳の少女に対し非難されるべき行動をとった」と認めた。□

 全フランスでこれは氷山に一角にすぎないであろう。
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図書館でのコピー制限で、困った

 昨日は、イエズス会日本管区に部屋を借りての読書会が18時からあったので、午後登学し、図書館で論文をコピーしようと、2階のパソコン室に行ったのだが、どうしたものかなんど挑戦してもコピーができない! 何か間違っているのだろうか、私がぼけたのだろうか、となんども繰り返して悪戦苦闘したけど、時間が来たので諦めてパソコンを終了し始めたら、そこで、「あなたは規定枚数のコピーを使い切っているので、一日30ページしかコピーできません」という表示が裏に隠れていたことにようやく気付いた。4本コピーしようとしたのだが、たまたま30ページをわずかに越えた論文がまず2つあって、それがネックとなっていたようだ。

 夏休み以前に年間700枚だっけの規定枚数を消化してしまっていたことを忘れ果てていたのだから、やっぱり私の問題だった。こうして原因が分かっただけで由としたいところだが、こんなことで論文をコピーできないと研究に差し障りが生じるのだが・・・。逆にいうと、退職教員にも年間700枚無料でコピーさせてくれるのは非常に有難い恩恵であるには違いない。その枚数を年間半ばにして消費してしまったのは、学会発表のため理系の論文をやたらコピーしたあとに、ケンブリッジ大学出版局の本を丸々一冊印刷してしまったのが原因なのだから、これもまあ自業自得である。

 しかし、30枚未満だったら毎日通えばコピーできるわけだが、30枚越えている論文ではそれもできない。今回の場合は、1つを掲載した雑誌が中世思想研に入っているようなので今度行こうと思うが、今度は研究所が開いている日や時間でないといけないし、後の2本も有料でpdf送ってくれるサービスもないみたいなので、とりあえずお手上げである。困ったものだ。

 但し、読むべき論文は他にも山ほどあるのだが、どうやら私はコピーして手元に置いておかないと安心できない性格のようで、ない物ねだりでストレスになってしまうのだ。困ったものだ。

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トスカーナの温泉跡から青銅像24体その他出土

 在伊の藤井慈子さんから速攻で情報が届いた。以下の叙述はhttp://www.thehistoryblog.com/による。

 こういう遺物ははたして、冥界に通じる聖なる温泉・鉱泉に奉献されたものか、それともキリスト教勢力によって忌むべき異教の聖泉をつぶすべく廃棄されたものか、判断がむつかしい。発掘者たちは立像等の破損がわずかなので、前者とみているようだが、どうだろう。上からの命令でしかたなく地元民が形だけ埋め立て、それへの信仰はその後も絶えることなく継続された、少なくともしばらくは、と考えたいところだ。実際には、うまく立ち回って、キリスト教の聖人がらみの聖泉だとでっち上げて生き残った聖所もあるのだし。

 生真面目に伝統信仰に固執するのではなく、新興勢力を受け入れて、キリスト教の祠をぶっ立てるなり、聖母顕現の噂を振り撒けば生き残れたかもしれないのだ。なにしろ聖地は移動せず、なのだから(ケルト世界のフランスの例だが、以下参照:https://www.koji007.tokyo/wp-admin/post.php?post=632&action=edit)。

 そもそもオルビエトやビテルボ付近は火山地帯なので、温泉・鉱泉が多く存在している。私も滞伊の長い邦人の方に連れて行ってもらい、下着で入浴したことがある。そばに遺跡があったりして野趣にあふれるものや、プールなどちゃんと色んな設備が整ったテルメだったり、得がたい体験だった。もっとも後者では、浴後に体を流す冷水かと思ったシャワーが、そのまんまの熱水だったのには不意打ちでビックリしたことあるが。お気をつけください。

イタリア最大の古代青銅器群が聖なる浴場から発見される    2022年11月8日

場所は、フィレンツェとローマの中間のようだ

 シエナ近郊のサン・カッチャーノ・デイ・バニSAN CASCIANO DEI BAGNIにある古代の神聖な浴場の発掘調査で、極めて状態の良い24体のブロンズ像群が発見されました。紀元前2世紀から紀元1世紀にかけてのもので、古代イタリアで発見されたブロンズ像の収蔵品としては最大級。これは、1972年にRiace海岸で発見された紀元前5世紀のブロンズ像に匹敵するほど重要な発見だと、マッシモ・オザンナ美術館総監督官は述べている。

 サン・カッチャーノ・デイ・バニーニの温泉と鉱泉は、ヒギア(健康の女神)、アポロン(治癒と病気の神)、アスクレピオス(健康の神)といった医術に長けた神々の介入により、あらゆる病気や状態を治癒すると信じられていた。信心深い人々は、温泉に入ることで、神々と直接触れ合うことができると信じていた。余裕のある人々は、体の不調を表すブロンズやテラコッタの置物や、聖域の公式造幣局で鋳造されたピカピカのコインをお供えしていったのです。すでに6,000枚以上の硬貨が発見されている。

 少なくとも紀元前3世紀には、エトルリア人がこの地に最初の聖域を建設し、1世紀初頭にはローマ人によってより大きな複合施設に拡張された。紀元5世紀には閉鎖され、この浴槽は倒壊した柱で塞がれた。しかし、代々の礼拝者が残した神々の肖像や奉納品の数々は、そのまま残された。

 2019年に聖域の発掘が始まって以来、考古学者たちは、治癒を求める請願者が聖地に残した身体の一部(子宮、ペニス、腕、脚、耳)の形をした例の奉納物を数多く発見している。10月の最初の数週間には、より大きな全身像が池から現れました。熱く濁った池は金属を保存し、多くの像が無傷で残った。大きな像の中には、腕に蛇を巻き付けたヒギエイアの像、アポロの裸体像、髷を結った若者の像などがあります。

 ブロンズ像のほとんどは古代に破壊され、再利用のために溶かされていたため、20数点の発見は非常に重要である。また、エトルリアの影響力の衰退とローマの支配の間の変遷を示すユニークな記録でもある。エトルリア人は、ローマとの戦い(軍事、政治、文化の対立)に敗れた他のイタリヤ民族と同様に、ローマ文化を同化し、ローマの生活様式を取り入れたのである。これらの彫像は、そのデザイン様式と、ブロンズ像に刻まれたラテン語とエトルリア語の碑文が、この過渡期を物語っているのです。碑文には、ペルージャのヴェリンナ家Velimnaやシエナ郊外のマークニ家Marcniなど、エトルリアの有力者が聖なる池に彫像を奉納したことが記されている。

 サン・カッチャーノの町は、このユニークな聖域に大きな計画を立てている。この聖域は考古学公園として整備され、池を見下ろす16世紀の宮殿は、この地から出土した何千もの考古学上の宝物を展示する博物館となる予定である。

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ポンペイにおける親ローマ派プロパガンダと、地元民の反骨精神のせめぎ合い:アエネアス神話をめぐって

 某講演会の準備をしていて見つけた論点です。欧米ではすでに指摘されてますが、銘文とフレスコ画、落書きを関連的に扱った内容は、本邦ではたぶん初演かと(違う!というご指摘お待ちしてます:k-toyota@ca2.so-net.ne.jp)。以下、その時のレジメ改訂拡大版を掲載します。

 複雑な前史を持つポンペイは、前1世紀にローマの勢力圏に組込まれ、ローマからかなりの植民を受け入れたことで(一説に4000名と)、住民の中で対ローマに関して微妙な感情のズレが生じていたようで、それが通りに面した表側での皇帝家顕彰と、民家の室内で密かで露骨なパロディー描写の併存というねじれ現象となったのでしょう。

ローマ建国神話の系統図

 女神ウェヌス[アフロディテ]とトロイア貴族アンキセスの間に誕生した英雄アエネアスが都市ローマの始祖で[彼の息子IulusがAlba Longaを創建:イウルス死後、異母弟Silviusが王位を継ぎ、その17代後がRomulusとRemus]、同時にユリウス家(Iulius Caesar, その相続人Octavianus= Augustus)の祖神に位置づけることで、皇帝権の正統性を喧伝していた。

(1)帝都ローマにおけるアウグストゥス家プロパガンダ

 ① Foro Romano北側の「アウグストゥスの広場」Foro di Augusto(アウグストゥスの自弁で建設し、前2年に落成式)

 ② 顕彰記念祭壇「アウグストゥスの平和の祭壇」Ara Pacis Augusti(前9年に元老院奉献)の正面左右の浮彫

左、色彩復元図             ;右、正面図像解説
左上段:マルス神、雌狼とロムルスとレムス;右上段:犠牲を捧げるアエネアス(ないし第二代王ヌマ)

(2) Pompeiiでの皇帝家顕彰の公的建築群

① Forum東南隅、Edificio di Eumachia(VII.9.1)の正門(G)北エクセドラ

  Forum東側の「ウェスパシアヌス神殿」は以前は「アウグストゥス神殿」で、歴代皇帝のゲニウス(守護神)に順次捧げられてきた神殿だった。そして「エウマキアの建造物」は帝都ローマの、アウグストゥスの妻の「リウィアの柱廊」を真似ていたと考えられている。要するにこの界隈はあからさまに皇帝一族顕彰公共建造物地帯だったわけである。

左、 Forum     ⬆  ;右、 H: アエネアス像  J:ロムルス像 
⬆ H       ⬆ J          ;右、⬆  Jの復元碑文

ニッチJの碑文(CIL X 809):Romulus Martis / [f]ilius urbem Romam / [condi]dit et regnavit annos / duodequadraginta isque / primus dux duce hostium / Acrone rege Caeninensium / interfecto spolia opi[ma] / Iovi Feretrio consecra[vit] / receptusque in deoru[m] / numerum Quirinu[s] / appellatu[s est]

「マルス神の子ロムルスは、首都ローマを建設し、38年間統治した。彼は敵の将軍カエニネンセス人の王Acroを殺害し、敵の戦利品をJupiter Feretriusに捧げた最初の将軍だった。そして、神々の中に迎え入れられ、クイリヌスQuirinusと呼ばれた」

② アエネアス一族のトロイア脱出図像

左、Iulus, Aeneas, Anchises;中、背後の女性は母Venus女神;右、Anchises捧持神像はPenates

(テラコッタ製:Pompeii,VII.2.16);(大理石製:Aphrodisias出土);(描画: 16世紀半ば)

(3)Pompeii, IX.13.5:Casa dei M.Fabius Ululitremulus

左、1913年発掘当時の写真;右、1961年の写真:フレスコ画は既にほとんど剥落
左、中央出入口(未発掘)の左右の壁にフレスコ画;中、Romulus図像;右、Aeneas一族のトロイア脱出図

  -1:出入口の左側の絵の下に選挙推薦文:CIL IV 7963

   C(aium)  Cuspium  Pansam  et / L(ucium)  Popidium  L(uci)  f(ilium)  Secundum  aed(iles)  o(ro)  v(os)  f(aciatis) / Fabius  Ululitremulus  cum  Sul(l)a  rog(at) 

  「Gaius Cuspius PansaとLucius Popidius Secundus, Luciusの息子を、造営官にするよう皆様方に懇願する。Fabius UlulitremulusがSullaと共に推薦する」

  -2:出入口の右側の絵の下に落書き:CIL IV 913

   Fullones ululamque cano non arma virumq(ue) 

  「洗濯屋どもと一羽のふくろうを、私は歌う;戦いと英雄ではなく」

  元歌:Vergilius, Aeneis, I.1:arma virumque cano 「戦いとひとりの英雄を、私は歌う」

  解釈:この家の主人が、その時代にローマ皇室が大々的に宣伝していたプロパガンダに追従してわざわざ玄関の外壁に麗々しく描いているのを見て、反骨精神旺盛な根っからのポンペイ住民が、明らかにアイロニカルな意図で書きつけた落書き。なお、この家の主人の洗濯・縮絨業者Ululitremulusの名前と、洗濯・縮絨業者の守り神のミネルウァ女神の聖鳥が「ふくろう」ululaをかけた言葉遊び。また、フォルムの壮麗な建築物を奉献したエウマキアも洗濯・縮絨業者だったこととも関連していたのだろう。

 [参考図版]Pompeii, VI.8.20「L.ウェラニウス・ヒュプサエウスの洗濯・縮絨工房」Fullonica di L.Veranius Hypsaeus 出土の角柱に描かれたフレスコ画。正面上段に、布を脱色するため籐製のかごの中で硫黄を焚く段取の絵に聖鳥のふくろうが描かれている。現在は国立ナポリ考古学博物館所蔵。このフレスコ画についていずれ多少論じたいと思っている。そのキモは、この下段のフレスコ画なので、先のない身でもあり、おまけついでに併せてアップしておこう。

右が復元図版:足で踏んだりして縮絨ないし洗濯している場面だが、描かれた作業従事者(奴隷)4名中なんと幼そうな子供が3名を占めている。これに注目しないでどうする!

(4)アエネアス一族を皮肉って笑い飛ばすフレスコ画:Pompeii, VI.17 Insula Occidentalis, Diego Cuomo所有農地masseriaの遺跡の室内から1760年出土(スタビアエ出土としている叙述があるのは、以下の【ポンペイ小史】末尾参照)

左、アエネアス一族の脱出   ;右、その修復図(部分的に不正確)
ロムルスの凱旋:背中にトロパイオン等を背負っているのだろうし、像の前後に文字らしき痕跡も見えるが、いずれも不明瞭

「脱出」フレスコ画での露骨な二つのパロディー:

  •  巨大男根をぶら下げた犬頭猿人chynocephalus(頭が犬、体が猿、足は人間):それが、自制心のない非理性的存在をイメージすると同時に、「犬」(canis) からの連想で、ウェルギリウス『アエネーイス』冒頭の一句「私は歌う」(cano)から「汝は歌う」(canis) の、かなり高度な駄洒落ともなっている。ちなみに、カエサルもアウグストゥスも、同性愛を含む性的不行跡については民衆の揶揄の対象だった(スエトニウス『ローマ皇帝伝』(上),岩波文庫:Suetonius, De Vita Caesarum, I.49-52;II, 65-71) 。
  •  父アンキセスは、頭にヴェールをかぶり(礼拝時の所作か)、家の守護神像の代わりにサイコロを振る箱を持っている:賭博好きなアウグストゥスへの皮肉(Suetonius, De Vita Caesarum, II, 71.2-4)であると同時に、賭け事で高い賽の目「アタリ」をVenus(ユリウス家の祖神)といい、低目「スカ」をcanisと称していた、とも。

通説によるポンペイ拡張図(異説あり)

赤、サムニウム時代の街;青、前4世紀の最初の拡張;緑、二度目の拡張;黄、前89年以降のローマ帝国による拡張
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今晩の皆既月食

 2022/11/8に442年ぶりの怪奇、もとえ皆既月食が18時過ぎから21時ごろまで見ることできるとのこと。次回は322年後とのことなので、いずれにせよ我が人生に一度だけの天体ショーである。https://news.nifty.com/article/technology/techall/12213-1974861/

 年取るとこんなことも感慨深く感じるようになるようだ。

https://news.nifty.com/article/item/neta/12305-1973692/

 なお、月と入れ替わりに20時30分頃から天王星食も生じるようだが、天王星はそう明るくないので、目視は困難だそうだ。この両者同時の出来事は過去5000年に一度もないそうである。

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世界キリスト教情報第1659信:2022/11/7:トラスとレタス

≪ 目 次 ≫
▽英国国教会のオックスフォード主教、同性婚禁止に終止符を打つよう求める
▽燃やされるのはトラス前首相とレタス=英ガイ・フォークス・ナイト
▽教皇、バーレーン訪問を終了、ローマに戻る
▽WCC総幹事代行、モスクワでキリル総主教と会見
▽バンコクで2年越し「アジア2022」=全アジア規模で宣教考える

 今回は、トラスとレタスの件を紹介しよう。

◎燃やされるのはトラス前首相とレタス=英ガイ・フォークス・ナイト

【CJC】AFP=時事通信によると、国王爆殺計画が未然に防がれた歴史的事件を記念する英国の祭り「ガイ・フォークス・ナイト」は著名人を模した人形を燃やすことで知られるが、今年は史上最短の在任期間49日で辞任したリズ・トラス前首相の人形が火にくべられることになった。

 英南東部ケント州のイーデンブリッジで11月2日、高さ10メートルのトラス氏の人形がお披露目された。英大衆紙上でトラス氏の政治生命と賞味期限を競って勝利したレタスを肩の上に乗せ、足元には首相官邸に暮らす猫のラリーがまとわりつく姿。アーティストのアンドレア・ディーンズ氏が制作した。

 「ボンファイア・ナイト(たき火の夜)」とも呼ばれるこの祭りは、1605年11月5日に、ガイ・フォークスらカトリック教徒がプロテスタントの国王ジェームズ1世と英国会議事堂を、たる36個分の火薬で吹き飛ばそうとした計画が阻止されたことを記念する行事。11月5日か直近の週末に、かがり火をたき、花火を打ち上げ、人形を燃やすのが恒例となっている。□
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古代ローマの未解決遺物:spintriae【閲覧注意(^_^;】

 「spintria」とは、辞書的にはこの言葉は「男色」とか「男娼」といったきわものめいた名称だが、英訳では「セックス・トークン」。この貨幣型をしたトークン、実は私もおそらく模造品ながら(新品同様の輝きだったので)ebayでの出物をみつけ、教材としてチェコから6枚ほど入手している。価格は購入時で¥5620。

 上掲のように、20ミリから23ミリのやや小型の貨幣状の裏表に数字とセックス体位の図像が打刻されているのが通例である(なぜかほとんどが男女ペア:これを根拠にローマ世界ではギリシアと異なり同性愛は実際には低調だったという研究者もいるようで、私などすぐさま納得されそうになる)。数字と図像がどれでも共通していないので、相関関係はない。数字はI からXVIまで確認されている(ごく少数ではあるがそれ以上もある)。また図像には以下のような男根とか動物同士の獣姦を描いたものもあるらしい。材質は通常真鍮か青銅製。

 解説によると、発行年代はティベリウス帝代(治世は後14-37年)の22-37年と、ごく限られていたと言われている(もちろん、別説あって、70-75年発行や75-90年発行もあったとする者もいる)。

 最大の謎は、なんのために制作されたのか、それがよく分かっていない。

数字が体位による値段であるという説もあるが、数字が同じでも図像が違っていたりするので、却下(ただし、当時の娼婦の相場は2-10/20アスらしかったので、 一応XVIまでの数字なのはリーゾナブルであるが)。

 旅人や兵士が言葉の通じない異境の地で買春する場合に、なにかの符丁として使ったというのも、そういう界隈では当然ラテン語であれば娼婦も学習するのは、戦後日本で確認済みであるはずだ。まあゲルマン人や東方諸民族の雑多な補助軍兵士であればそうはいかないかもしれないが。いずれにせよ現金使用が避けられる事情が説明されないと納得できないわけであるが。

 また一説には類例として、こういうのは近代でも、アメリカの辺境、ボーア戦争時代の南アフリカ、世紀末のマンハッタンの例でたくさんあった由で、1919年、Upton Sinclairは、売春宿の利用者が前金で出納係に支払い、いわゆる「ブラス・チェックbrass check」を受け取り、その後に風俗嬢のサービスと交換できるトークンを受け取るシステムについて、若い頃に学んだと述べている、らしい。

ともかく しかし考古学的に出土してはいるが(とはいえ、浴場からで、肝心の売春宿から出ていないという事実もあるらしい)、文献学的には正確に触れられることがないことも解せないわけだ。確かにスエトニウス「ティベリウス伝」43にはその単語が出てくるが、これは3人一組の性技を示したものだし(これがspintriaのそもそもの原意である:なのに、男子の同性愛と示していた語がなぜ男女の営みに転嫁してしまったのか、私は疑問視せざるをえない)、同じく「ティベリウス伝」58の文言は、前後の文脈からして現在のトークンと関連付けるのは、無理筋といわざるをえない:ティベリウスが厳格な法規実施を命じたので、「あげくに、アウグストゥスの像の前で奴隷を殴っても,着物を着替えても,アウグストゥス像を刻印した貨幣や指輪を公衆便所や淫売屋へ持ちこんでも、・・・このようなことまで死刑の対象となったのである」。著作年代がドミティアヌス期のマルティアリス『エピグランマタ』8.78.9のほうはもっと信頼できない。

 実際のコインにはごく一部とはいえローマ皇帝の図像が打刻されているので、買春といった特殊な商取引でのその使用を避けるためだった、という説もあるが(例証として挙げられるのは、Dion Cassios,78.16.5;これはカラカッラ時代のことになる)、当時買春は決して卑下すべき職業ではなかったので、ちょっと納得しがたいものがある。

 ただ私的には、現金を持たせることを避けるために、何らかの報酬対価としてのセックス券だったとするなら、奴隷用だったというのなら納得できようが、その場合こんな込み入った貨幣状のものを与えるとも思えないわけで。むしろ図像に目を奪われるのではなく、まったく別の視点、ゲームで使用されていたのでは、という考えも当然あるし、ちょっと前にアップしたポンペイの郊外浴場脱衣所での脱衣箱の数字とその奧の体位図との関連で、脱衣籠の預かり証だったという説まである。

 いずれにしても、私としてはこれくらいにしておく。心ある人が以下の最新刊を読破して納得いく結論なり仮説を提示してくれることを期待したい。Webからただで降ろせるのだし。Filippo Pietro Alessandro Cislaghi, Lasciva Numismata :Le tessere erotiche romane, Anno Accademico 2019/2020.

 これを書いた直ぐ後に、以下を知った。色々新知見を手際よくまとめて提示しているので全文差し替えしたいところだが、私に手直しする余裕が残されているだろうか–ないような気がする。

 Franco Guillermo Mazzanti, Alla scoperta di storia e segreti di una serie di intriganti oggetti para numismatici, le spintriae della prima età imperiale con scene erotiche:2022/2/2(https://www.cronacanumismatica.com/cli-speciali-di-cn-spintriae-le-tessere-erotiche-dellantica-roma/)

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「氷河の未解決事件」をみた

 2022/11/6:これはどうやら10/29のNHK Eテレの地球ドラマティックの再放送だったらしい。例のアイスマンのことかなと思っていたら、冒頭で遺物は出てきたが遺体は見つからなかったといっていたので、別物と判明。結論的に出土遺物の年代測定は前2800年に集中していたので、同一人物の所持品と断定された。アイスマンは前3300年なので、彼よりは500年後のものというわけである。

 内容は以下でくわしく紹介されている。https://ameblo.jp/otoko-bana/entry-12772687255.html

 アルプスでは近年、氷河が溶けてそれで遺物が出てきた、というのだから、温暖化による新発見がこれからも続くことになる。新石器時代以前の研究にとっては一大チャンスであるに違いない。それが未来の人類の終焉につながらないことを祈るばかりである。

 まあ、結局、誰が何故あそこでと、謎だらけで終わらざるを得なかったわけであるが、登場した考古学者の多くが女性で、彼女たちが一,二日かけて現地に向かう登山から始めているのにへーと思ったり、実験考古学で昔の服装装備で試みたこと(革製の靴の中に乾燥させたコケを入れての登山が予想外に快適だった、とか)、などトピックス的におもしろい内容だった。

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今晩のプライム・ニュースは出色だ

 現在、出席者にロシアのミハイル・ガルージン在日大使(11月下旬に離任予定)と元外務省欧亜局長東郷和彦、それに筑波大東野篤子が出席していて、かなり白熱した討論を行っている。二時間という時間帯がそれを可能にしていると思う。

 これまで圧倒的に米欧経由の情報が溢れている我が国で、生の声でロシア側の意見を聞く得がたい機会である。司会の反町もちゃんと捌いている印象がある。もちろん、立場が違うので言い合いに終わるのはしょうがないが。

 無料ライブ配信もあるようなので、後からでも見ることができる(https://www.bsfuji.tv/primenews/)。昨日の東京財団政策研究所首席研究員の「か(木偏に可)隆」氏の話もたいへん面白かった。

 

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