カテゴリー: ブログ

明治人の中国見聞録:飛耳長目(32);トイレ噺(13)

 偶然行きついた樋泉克夫(愛知県立大学名誉教授)の「明治の反知性主義が見た中国」がなかなか面白い。それを読んでいて廣島高等師範の学生を中心としての明治39年夏の朝鮮・満州方面への総勢600人余の修学旅行を記した「日露戦争の翌年、朝鮮半島、満州に修学旅行にでかけた高校生たち」https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17644の中で、落書は本邦人の悪習と書いている箇所があって、おやおや、と。私も尚志会の会員なので、その原典『滿韓修學旅行記念録』(廣島高等師範學校 非賣品 明治40年)を探っていて、我が図書館に、小島晋治監修『幕末明治中国見聞録集成』全10巻、ゆまに書房、1997年、が所蔵されていることを知った。スケッチとかあるのではと、さっそく見てみようと思う。

 このシリーズが樋泉氏(なんと私と同い年)の種本かと思ったのだが、書き手の重複は10分の3を占めているだけだった。まあ、擬古文調の原文で難儀しなくてすむウェブをまずは読破しようと思うが、清朝末期の中国の有様は、私のもう一つの関心テーマの放尿・脱糞にも寄与せざることなしといええず、という感慨にとらわれてしまう内容が・・・。

 それにしてもたいした知識も語学力もない身で果敢に異境に飛び込んで、旺盛な知識欲を発揮していた明治人の気骨に触れ得たことは、一大収穫だった。記録には残らないのかもしれないが、今もそうだと思いたい。

Filed under: ブログ

性的虐待、今度はボーイスカウト:遅報(26)

 今日のBSのワールドニュースで、アメリカのボーイスカウトの活動中での性的虐待問題が。72年間でリーダー格7800名が関与か。すでに裁判費用で破産説も。https://www.cnn.co.jp/usa/35136350.html;https://news.mynavi.jp/article/20190429-816559/

 ウェブによるとすでに2012年に報道が。https://www.afpbb.com/articles/-/2908157

 コーカソイド、否、アメリカはというべきか、どこもそこも、おいおい。

Filed under: ブログ

アポリジニ天文学:遅報(25)

 今、偶然BSでやっているのを見た。「コズミックフロントNEXT:苛酷な大地が生んだアボリジニ天文学」。これまで天文学の主流だった北半球ではなく、南半球のアボリジニこそが人類最古の天文学者だった、という視点。星座の見え方が北半球とは違う、という視点が新鮮だった。2017/9/14放送。NHKアーカイブスが今メンテナンスで検索不能なので確認できないが、たぶんみることできるのでは。

 https://www.videomarket.jp/nod/title/230173/ARM:メソポタミアや古代ギリシアなど、主に北半球の国々で誕生し、発展したとされる天文学。驚くことに、南半球オーストラリアの先住民族アボリジニが「人類最古の天文学者」である可能性がでてきた。いったいなぜ文字を持たなかったアボリジニが、星空をカレンダーやカーナビとして使い、奇妙な壁画に残してきたのか。その秘密は、どこまでも続く荒涼とした大地に隠されていた。謎に満ちたアボリジニ天文学の姿に迫る。

 この特集のリストを見ていたら、こんなのもあった。これって、黒人女性に焦点をあてた映画「ドリーム」:https://ja.wikipedia.org/wiki/ドリーム_(2016年の映画)、とよく似た内容のような気が。

「コンピューターと呼ばれた女性たち」:マーキュリー計画やアポロ計画など、旧ソ連と宇宙開発競争を行っていたアメリカ。当時のNASAには「コンピューター」と呼ばれる女性たちが働いていた。男女格差があった当時、男性たちの指示のもとに動いていたが、やがてアメリカ初の宇宙飛行や月面着陸にも重要な役割を果たすようになった。「コンピューター」と呼ばれた彼女たちの知られざる活躍を、当時の関係者たちの証言から明らかにしていく。

 それで思い出したことが。一昔前、パピルスや羊皮紙の断片が発見されたら、たちどころにそれが聖書のどの箇所かを判定できる修道士や司祭がいて、という話があった。日本だと稗田阿礼といったところか。

【追伸】2/26朝、上記で書いた映画「ドリーム」の主人公の黒人数学者の死亡がニュースで流れた。

Filed under: ブログ

世界キリスト教情報1517信:2020/2/17

目次
▼中国とバチカンが初の外相会談、対話継続の意欲確認      
▼教皇、「アマゾン・シノドス」後の使徒的勧告発表      
▼教皇の既婚司祭認めない判断、アマゾン地域は今後も求める決意      
▼シンガポールで新たに8人の感染確認、5人は教会で      
▼春学期でコンコーディア大学ポートランド校閉鎖

 アマゾン・シノドス後に、教皇はスペイン語で「使徒的勧告」を発表した。その中で、既婚男性の司祭職については言及しなかったが、アマゾン地域のカトリックでは失望よりも、今後の方針転換に希望をつなぐ声があがっている由。

Filed under: ブログ

七味唐辛子:飛耳長目(31)

 今,再放映しているテレビのドラマ「ラストチャンス 再生請負人」(2018年)の中で、老人の占い師(ミッキー・カーチス)が言っていた言葉、というか、江上剛『人生に七味あり』徳間文庫、2013年より。「人生は七味とうがらし:うらみ、つらみ(辛み)、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ」。作者は、映画「金融腐食列島呪縛」のモデルだった人。

 大の大人が社会でこんな場面に直面して、七転八倒しているわけだから、子供の世界でいじめがなくなりっこないはず、と思えてならない。

Filed under: ブログ

口の文化、目の文化:飛耳長目(30)

 文化の違いでマスクへの感覚もちがってくる、というのは知っていたが、その理由が「得体の知れなさ」にあったとは。https://digital.asahi.com/articles/ASN2H3WJQN2GUHBI00R.html?iref=pc_rellink_06

 私的感覚だと、マスクしていると、顔のアピールが目だけになり、美醜に関係なく、みなさん美男美女に見えていいなあ、とぼんやり思ってきた。

 そういえば、サングラスかけた欧米人たちがどうもうさんくさく、犯罪者っぽく感じてきたなあ、と。得体の知れなさを日本人は目から判断するという指摘には納得。

【追伸】5/27 面白い指摘をみつけた。https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2020/05/post-1165.php

 トランプ大統領がマスクをしないのは、西部劇での銀行強盗がマスクをしていて、イメージ悪いから、だと。意外と説得力あるかも。

【補論】2021/12/6 再放送で見たNHK BSプレミアムでの「ヒューマニエンス」の「”顔” ヒトをつなぐ心の窓」で漫画家のヤマザキマリが言っていたが(こういう所が、私が塩野女史なんかとちがって、彼女を高く評価するところなのだ)、イタリアでは赤ちゃんが生まれると赤子に向かってとにかく色々な単語で「可愛いs caro(a)」とベタ褒めして話しかける、だから赤子は生後7か月もすると親の口元に意識を集中させるようになる、この点日本人は言葉ではなく目で愛情を伝えようとするから赤子は目に集中する、それが今に続いている、という番組の流れになっていて、納得。

 以下は後日談になるが、こういうこともイタリアで聞いた記憶がある。この子供へのベタ褒めは、ずっと続く。それで、子供は自分が世界で一番「かわいい」存在だと思わされて成長するのだが、実際には成長するとそうではないという現実に直面して、悩み出すのだそうだ。

Filed under: ブログ

ペルペトゥア・メモ:(7)総督代理Hilarianusについて

 『受難記』VI.1以降で、とある都市の公共広場でペルペトゥアたちの裁判が開催されたことがわかる。その場所を研究者たちは例外なくカルタゴと考えてきているが、当時、属州総督=裁判官は管轄属州の主要都市を巡回していたので、なにも州都(今の場合はカルタゴ)である必要はないが、まあ州都での出来事としたいわけだ。彼女たちが収監されていた場所から歩いていける範囲に円形闘技場があったので、カルタゴがその条件を満たしているという事情もある。

 彼女たちの裁判官は「財務管理官procurator ヒラリアヌスHilarianus」だった。元老院管轄属州で最高の格式を誇っていたアフリカ州には当然執政官格の元老院身分が派遣されるのが常だった。ヒラリアヌスは「そのとき属州総督proconsulで死去したミヌキウス・ティミニアヌスMinucius Timinianusの座にいて死刑執行権ius gladiiを拝命していた」、要するに現職の総督が在任中に死亡したので、後任総督が派遣されるまで(ないし、次年時になるまで)、臨時に勅命によりおそらくカルタゴないしその近辺で皇帝直轄領の財務管理官だったヒラリアヌスが任命されたのであろう。Rives, 1996, p.5は、その線で年給金が10万セステルス級のprocurator provinciae Africae tractus Karthaginiensisと、20万級のProcurator IV publicorum Africaeの二つの候補を挙げ,後者と想定している。それが騎士身分の最高位であり、アフリカ属州のproconsulの代理にふさわしいとの判断からである。

 さて、その元来の職掌からヒラリアヌスは宮廷奴隷ないし解放奴隷出身者だった可能性が高い。そもそも命名法的にも本『受難記』で故意にcognomenのHilarianusのみで記され、他方proconsulという職名から元老院身分が確実な前任総督が姓名二単語Minucius Timinianusで表示されていることからも、それは傍証されるだろう。編纂者は冷厳に彼らの身分的違いを見極めていたのだ。

 奇しくもこのヒラリアヌスについて、同時代人テルトゥリアヌスが212/3年頃書いた『スカプラへ』ad Scapulam,3.1で以下のように述べている。「私たちは嘆かざるを得ません。いかなる都市も私たちの血を流して罰されずにはいられないだろうからです。属州長官ヒラリアヌス下でsub Hilariano praesideのようにです。人々は私たちの墓所の土地についてde areis sepulturarum nostrarum叫んだのです。’(キリスト教徒のための)土地などないareae non sint!’。(ところが)なくなったのは、彼ら自身の脱穀場areaeのほうでした。というのは、彼らは彼らの収穫物に事欠いたのです」。すなわち天罰として天変地異が異教徒を襲った,という意を同音異義語のだじゃれ含みで述べている(参照、大谷哲訳『歴史と地理』No.664, 2013-5, p.30;但し要修正)。ここで注目すべきは二点で、まずpraesesと当時もっぱら騎士身分担当属州の総督に付与された名称を使っていること。即ちここでも書き手のテルトゥリアヌスはヒラリアヌスの所属身分を明確に意識して殊更明記している。またそこでの叙述内容からは『受難記』とは別のキリスト教徒迫害理由が浮かび上がるはずである。

 1968年に公表された2つの碑文史料(A.Garcia y Bellido, Lapidas votivas a deidades exoticas halladas recientemente en Astorga y Leon, in : Boletín de la Real Academia de la Historia, 163, 1968, pp.203-204, figs.4 & 5 ≒ AE, 1968, 227, 228)を投入して、新たな知見が展開されるようになった。出土場所はスペインのレオン県のアストルガ。私は20年前に2夏がかりでカミーノを全踏破した。ブルゴス、レオン、そしてアストルガを通過したが、こんな碑文のことなど知りもしなかった。

 T.D.Barnes, Tertullian, Oxford, 1971, p.163 ; W.Eck, Miscellanea prosopographica, ZPE 42, 1981, p.235f. ;J.B.Rives, The Piety of a Persecutor, in: Journal of Early Christian Studies, 4-1, 1996, pp.1-25(idem, Religion and Authority in Roman Carthage from Augustus to Constantine, Oxford, 1995, p.244);Barnes, Early Christian Hagiography and Roman History, Tübingen, 2010, pp.304-7.

p.203 fig.4:男神たちと女神たちーー万神殿内で嘆願されるが正当かつ当然であるーーに、P.Aelius Hilarianus、Publiusの息子、皇帝財務管理官は、子供たちと共に、正帝・・・の安寧のため・・・

p.204 fig.5:Jupiter Optimus Maximus,、Juno Regina、Minerva Victrixに、P.Aelius Hilarianus、Publiusの息子、皇帝財務管理官は、子供たちと共に、敬虔かつ豊穣の正帝・・・の安寧のため・・・

 名前が削り取られた皇帝(たぶんコンモドゥス帝:在位180-192年)の治世下にスペインのアストルガで、Publius Aelius Hilarianusが財務管理官として奉職中に、子供たちと共に皇帝の安寧を願って2つの奉献を行った。ここでのヒラリアヌスが、203年ごろに北アフリカ属州カルタゴ付近に派遣されていた者と同一人物、と考えるわけである。それを、H.-G.Pflaum, Les Carrières procuratoriennes équestres sous le Haut-empire romain, Suppl., Paris, 1982, p.117 や、W.Eck, RE Suppl., XV, 1978, p.3, 69a)は、彼の職名を同じく20万級のprocurator Hispaniae Citerioris per Asturiam et Gallaeciam、ないしprocurator Hispaniae Taraconensisであると結論している。そして彼の父の名前もPubliusだったことが分かる。

 献辞文の一つはよろずの男女の神々に捧げられ、もう一つは帝都ローマのカピトリウムの三対神(ユピテル、ユーノー、ミネルウァ)に若干古風な用語で献辞している。これは、彼がローマ伝統の諸神格を崇敬していたことを示しているはずで、これを根拠にRivesらは、かく伝統的宗教に敬虔だった人物が、キリスト教徒たちのごとき蛮族的諸迷信に好意を示すことなどありえない、他方、他の属州総督たちは多くの場合、彼ほど宗教や迷信の諸問題にたいして興味を持たず、ただ単に彼らが理解した限りでの、一般的な諸先例に準拠して法律や命令を実施していたにすぎない、要するに、ヒラリアヌスをかなり熱心な異教信仰者として描いているわけである。しかし、そもそも公人としての宗教儀礼を個人的宗教心の表れと直結するのは先に結論ありきの安直すぎる理解だし、『受難記』を読む限り、私は、彼自身もレベル的に他の総督たち以上に熱心にキリスト教迫害していたとは思えない。たまたま副帝ゲタの誕生日祝賀の下達があり、それに必要な死刑囚を得ようとしただけのこととみたいのだが、上記テルトゥリアヌスの表現からは、キリスト教徒の墓地所有が問題になっていた可能性がある。真実は奈辺にあったのだろうか。

 さて若干余談ながら、同様に碑文研究から、このカルタゴのヒラリアヌスの子孫も孫の世代まで想定されている。息子P.Aelius Apollonianusとその息子でPrimipilaris職にあったP.Aelies Hilarianusである。

 続きとしていずれ、先任総督ミヌキウス・ティミニアヌスについて言及するつもりである。

Filed under: ブログ

特殊世界地図:遅報(24)

 世界地図を、「GDP」「負債」「人口」「出生」「個人的富」「億万長者」の指標で各国別に表示した、2016年度版があって、興味深い。https://www.huffingtonpost.jp/2016/08/10/world-map-wealth_n_11419268.html

 似たような表示で、2050年のGDP推計値が示されているものもあった(1960年、2015年のものも作成したと書いてあるが、私にはみつけられなかった)。30年後の日本も肥え太ってまんざらでないようでご同慶の至りだが、さて、このたびのコロナウイルスでアジアの隆盛予測はどうなることやら。https://globe.asahi.com/article/11529760/?utm_source=outbrain&utm_medium=recommend&utm_campaign=AR_9

 そしてまた、2大強国のアメリカとロシアがやたら小さくなっているのも、さてどうだろうか。

 それにしてもブタ色の習近平のお尻からひねり出されているのが、韓半島、日本、そして台湾に見えてしまう私は変態なのだろうか。

Filed under: ブログ

観光公害:飛耳長目(29)

 孫娘が一週間ほどの沖縄の修学旅行から帰ってきた。沖縄はたいへんよかったけど、中国人が、と。コロナウイルスにもめげず、海外旅行をたくさん楽しんでいらっしゃったらしい。私も一昨年と昨年、京都に行ったとき、そのすさまじさにいささか辟易した体験がある。なにより古都の風情が感じられなくなってしまったのが、悲しい。だが、これは我が国だけの話ではないらしい。ま、イタリアは朝令暮改の国ではあるが、数年前に始まったスペイン階段の規制はいまだきちんとやっているようだ。さすがに昨今の大混雑ぶりは見逃せない、ということなのだろうか。https://globe.asahi.com/article/13100293


Filed under: ブログ