映画「櫂」をみた

 宮尾登美子の自伝的小説『櫂』原作の映画「櫂」(1985年、五社英雄・監督)をWOWOWプラスで見た。再放送は、11/17, 27。

 時代背景は大正から昭和にかけての高知で、女衒(「ぜげん」と読む:女性を遊廓など、売春労働に斡旋することを業とした仲介業者)の富田岩伍の妻喜和の一生にまつわる男女の愛憎劇なのだが、たとえば岩伍の人買いは「人助けにもなるこっちゃ。世間が悪いがや、貧乏が人の心まで腐らせる」や、遊郭「大貞楼」の女将(「おかみ」と読む)大貞の「男が妾の一人や二人囲うのは勢いや、小娘やなし、おなごの悋気(りんき)は女の恥やで」といった言葉は、当時の貧乏人の悲惨な生活ともども、100年経った現代では一般にはもはや想像もできないだろうが、似たような状況はしっかり現存しているわけである。病弱で忍従の、しかし強情な妻役に十朱幸代ははまり役だった。

 100年で認識はここまで変わり、しかし現実は何も変わっていないのである。ニッポン放送で岡村隆史は「コロナが明けたらなかなかの可愛い人が、美人さんがお嬢やります。お金を稼がないと苦しいですから」と放言しながら、NHKのちこちゃんを降ろされるわけでもないという現実もある。妙なもので、昔だったら速攻で降ろされていたのじゃないのかな。

 若い人にも一度はみてほしい映画だ。

【追伸】今日は今日とて同じ五社英雄監督の「吉原炎上」(1987年)を見てしまった。時代背景は明治最後の数年間である。これは内容の深みよりも映像美に走っている感じ。

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