別に検索してのことではなく偶然見つけたシリーズWomen in Antiquity (Oxford UP)なのだが、2011年から14冊出版しているという触れ込みで、しかし私がリストアップしたところ2022年までに20冊が出されている。そのほとんどが古代史というよりもローマ史関係なのが興味深い。
Hagith Sivan,Galla Placidia: The Last Roman Empress 2011
Marilyn B Skinner,Clodia Metelli: The Tribune’s Sister 2011
Duane W. Roller,Cleopatra: A Biography 2011
Elizabeth Donnelly Carney,Arsinoe of Egypt and Macedon: A Royal Life 2013
Dee L. Clayman,Berenice II and the Golden Age of Ptolemaic Egypt 2013
Josiah Osgood,Turia: A Roman Woman’s Civil War 2014
Barbara M. Levick,Faustina I and II: Imperial Women of the Golden Age 2014
Gillian Clark,Monica: An Ordinary Saint 2015
David Potter,Theodora: Actress, Empress, Saint 2017
Edward J. Watts,Hypatia: The Life and Legend of an Ancient Philosopher 2019
T. Corey Brennan,Sabina Augusta: An Imperial Journey 2020
Caitlin Gillespie,Boudica: Warrior Woman of Roman Britain 2020
Heidi Marx,Sosipatra of Pergamum: Philosopher and Oracle 2021
Elizabeth A. Clark,Melania the Younger: From Rome to Jerusalem 2021
Nathanael Andrade,Zenobia: Shooting Star of Palmyra 2021
Duane W. Roller,Cleopatra’s Daughter: and Other Royal Women of the Augustan Era 2021
Robert Wilhelm,Pearl of the Desert: A History of Palmyra 2022
Julia Hillner,Helena Augusta: Mother of the Empire 2022
Elizabeth Donnelly Carney,Eurydice and the Birth of Macedonian Power 2022
Barbara K. Gold,Perpetua: Athlete of God 2022
私的には、もはや全巻揃えようという気概はなく、とりあえずせいぜい、ペルペトゥア、ヘレナ、モンニカ、小メラニアが射程に入るくらいなのだが、なぜか翻訳も低調な昨今、このシリーズからかろうじてモンニカの一冊しか出ていない現状で(教文館、2019年)、女性史研究者の奮起を促したいところである。
ところで「天我をして・・・」もし許されるのなら、私としてはせめてヘレナに言及しておきたい。それはエウセビオス『コンスタンティヌスの生涯』の中に以下のような文言を見つけたからで、これを後世の研究者は不当に無視してきていると思うからだ。「彼(コンスタンティヌス)は彼女を神を畏れる者とされたので–それまでの彼女はそうではなかったのです–(οὕτω μὲν αὐτὴν θεοσεβῆ καταστήσαντα οὐκ οὖσαν πρότερον)、彼には彼女がそのはじめから同じ救い主の弟子となっていたように思われたのです」(III.47.2:秦剛平訳)。ここを素直に読めば、ヘレナは信者ではなかったが、息子は彼女をキリスト教信者としてみなした、といった意味となるはずだ。ここにも、知りえた事実を忖度なく書くエウセビオスの基本姿勢が現れていると思う。それなのに、彼を「頌詞家」として貶めてきた後代の、ほからぬキリスト教歴史家たちの意図的傾向性を私は指弾したいのである。
【追記】モンニカの本が来たので、翻訳ともどもこれから競り合わせてみようと思っているが、私が注目していた母モンニカに言及した墓碑(拙稿「聖モンニカ顕彰碑文とオスティア」『古代ローマの港町:オスティア・アンティカ研究の最前線』勉誠出版、2017)に触れてはいるが(原著p.164:翻訳p.220)、写真がないこと、あと、翻訳者の一人が「解題」の「オスティアの松林の向こうへ:聖モニカの墓の前に立って」で、墓所について不正確なこと書いている(p.279)のが残念である。
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