これが黒澤明の「生きる」(1952年公開)のリメイク版だということは知っていたが、全然雰囲気が違っていることにやたら感動した。2023年日本公開である。
初っぱなの鉄道駅での列車待ちの場面から、空間の奥行やテンポがまったく違っていて、なるほど端正で紳士的でいかにもイギリスなのである(ある意味、英国における古き良き時代を意図的に描いたものだったのかもしれない)。この点、原作の日本のほうはなんとなく敗戦直後のアジア的混沌を感じさせているような気がする。
しかし、作品の本質部分はちゃんと継承されていて、あとから脚本がカズオ・イシグロなのだということを知ってさもありなんと納得した。https://ikiru-living-movie.jp/
私も齢76歳を越えていつお迎えが来ても不思議ではないので(認知症だけにはなりたくないので、リタイア後の健康診断は拒否しているので、余命宣告は不意打ちで来るだろうし)、去り際の美学として誰かのために何かしたいという欲はまだ残っているとしても、せいぜいわずかな自分の存在証明を残すことしかできないだろう。映画の幕切れのように、たとえそれがすぐさま忘れ去られるものであっても。
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