プロシュート型?携帯日時計:遅報(71)

 以前見つけていた2017/1/24の記事がたまたま目にとまったので。「古代ローマの「ハム」形携帯時計、3D技術で検証:3Dプリンターを駆使して忠実に再現、使い方や機能が明らかに」(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012300022/)。

 以下がエルコラーノのパピルス荘から1775年に発見された現物の現況(後1世紀後半:国立ナポリ博物館所蔵)と発掘時のスケッチ。

 が3Dでの復元品に発見当時のスケッチにあった豚の尻尾状の針を設置;は豚肉のプロシュート

 私はこういう数式が必要な理系的思考はやたら苦手なのだが、私も大好きな豚の生ハム・プロシュート型をした携帯日時計Portable Sundialということで、おもしろいなと(別説としては、水筒がわりの革袋型とも;私的にはそのほうが身近な感じする)。古来携帯日時計は旅行者用に色々工夫されていたようだ(機会があれば触れたいものだ)。地中海世界では、中世修道院で修道士が時祷用に所持していたとか。

 このプロシュート型、きちんと計測すれば誤差15〜30分程度らしいが、弱点は風でゆれるので実際にはもっと不正確になるとのこと。ただ、考えてみるとのどかだったあの時代、そんなに正確さは要求されていなかったので、十分実用的だったとは思う。だがまあ私など天空の太陽の角度で推し量かればいいことと考えてしまう。当時の庶民にとっても必需品ではなかっただろうが。

 普通の日時計はこんな形で固定設置されていた。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/111000126/?SS=imgview&FD=-787263934はエルコラーノ遺跡のCasa della Gemma(Ins.or.I,n.1)の中庭設置のもの
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西洋古代史の未来問題

 ある古代史関係の学会の月報に、2022年度から高校世界史が必修からはずされ、フランス革命以後のみ扱う「歴史総合」が始まるので、西洋古代史の今後を憂えている一文を読む機会があった。

 かつて私が所属していた史学科では、1、2年次の概説レベルの講義でも高校で日本史しか受講してこなかった学生にも西洋史や東洋史を選択必修としていたので、学生の戸惑いに接することがあったが、「山川の詳説世界史の教科書をざっと読みなさい」といった乱暴な指導をせざるを得なかったことを想い出す。まあ選択必修のためそれなりの受講生も得ていたこともあり、行く末に危機感も感じることなく過ごしていた。そして立場が変わって教職リタイア後に、この私のブログは、主軸は古代ローマ史関係のはずのところ、アクセスの頻度数としては、圧倒的に雑談レベルのもののほうが多いのが現実で、世の中の皆さんにとって、古代ローマ史なんかどうでもいい存在なんだな〜と痛感している身からすると(この点、一世風靡された塩野女史はとにかく偉大というしかないが、なぜなのだ?)、いまさらながら研究者がおたおたしているのも滑稽な感じがしないでもない。

 私の感覚からすると、中等教育において地球規模で世界史を論じる事ができる、ないし論じる視野が要求されるのはいわゆる「大航海時代」以後であって、それ以前の原始・古代・中世は、隣接文明圏との関係を踏まえながらの各国史レベル中心でいいようにも思われるので、今回なんで時代区分的にフランス革命以降なのかについてはまったく納得できないけれど、古代ローマ史なんか、大学に入ってから外国文学や語学、地域研究で必要に応じて学べばいい、また、そういった科目を目指している者は高校で世界史を選択しているはずとの判断なのだろう。

 いずれにせよ、従来西欧での古典語・古典学重視がそのまま輸入されてきて、これまで高尚さを売り物にしてきた経緯があるが、その西欧においてさえ古典語・古典学の重要性減退が著しい昨今、見直されるのは当然である。なにしろ第2次世界大戦以降の日本史すら高校で手抜き状況は問題と言わざるをえないし。

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告解と古代コイン:遅報(70)

「ざんげで盗みを告白:古代の硬貨を200枚返還」(2021年1月22日 12:12 発信地:ローマ/イタリア)https://www.afpbb.com/articles/-/3327768

【1月22日 AFP】伊南部ナポリ近郊のパエストゥム考古学公園(Paestum Archaeological Park)へ21日、告解で窃盗を告白された司祭によって古代の硬貨約200枚が返還された。

 告解を行った人が、司祭に硬貨の返還を依頼したという。返還された硬貨208枚のうち7枚は偽物だったが、残りの大半は紀元前3世紀から紀元後4世紀のものだった。

 イタリアの古代遺跡から盗まれた遺物が、時に何十年もたってから返還された例はこれまでにもある。古代ローマ都市ポンペイ遺跡の関係者によると、中には呪いを恐れて盗んだ遺物を返す人がいるという。(c)AFP

【コメント】この情報だけでは遺跡からの盗掘というより、誰かの収集品を盗んだものの返還というべきか。ただ、写真や動画でみる限りは保存状況はよくないので、本来の収集家のものとは思えない。パエストゥムなら、ギリシアとローマの貨幣は出てくるだろうし。実は伝聞情報だが、どうやらポンペイにも街の中にこういったものを扱っている場所があるようだ。古物商は本物に偽物を混ぜて売ろうとする。私も、シリアやエジプトでは子供が売りつけに寄ってきた経験がある。粗悪品ないし偽造品だったが。イタリア南部のどこだったか、劇場跡の住居の住人の青年が「掘ったらコインなんか出てくるよ」と言ったら、「そんなこといっちゃだめ!」と慌てて母親がたしなめたことがあったので、まあ地下掘ればなんか出てくるイタリアではみなさんおやりになっているとも言える。我々外国人がそれをすると懲役25年だっけに処せられるらしいので、私は現地で購入した場合必ず領収書もらうようにしている。でもそろそろイタリアで官費で老後を過ごすにはいいかも、ね。

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世界キリスト教情報第1571信:2021/3/1安楽死

= 目 次 =
▼NZ地震10年=シンボルの大聖堂、修復に動きだす
▼教皇が3月5日からイラク初訪問、イスラムとの融和演出か=毎日新聞
▼スイス新型コロナウイルスに伴うセミロックダウンの段階的緩和計画、国内メディアの評価分かれる
▼「三一節」の大規模集会申告は計95件で「禁止措置」に=韓国ソウル警察庁
▼韓国野党・安哲秀氏の「LGBT」発言が物議=ソウル市長選
▼安楽死望む患者の「意思尊重」命じる判決=カトリックの国ペルーで
▼「記者殺害はサウジ皇太子承認」米が報告書、高官に制裁

 今回は、下から2番目の安楽死の件を紹介。

◎安楽死望む患者の「意思尊重」命じる判決=カトリックの国ペルーで
【CJC】カトリック教徒の多い南米ペルーの裁判所が2月25日、安楽死を望むポリオ患者の意思を尊重するよう政府に命じた。AFP通信が報じた。安楽死を認める判決は同国初。
 憲法裁判所は、保健省と社会保険庁が「安楽死によって人生を終わらせたい」というアナ・エストラーダ・ウガルテさん(44)の「決断を尊重」しなければならないとする判決を下した。
 現地メディアによると、心理学者のエストラーダさんは12歳の時から、治療法がなく進行するポリオに苦しんでいる。体のほとんどがまひ状態で、1日の大半をベッドの上で過ごし、排せつにも介助を必要としている。
 判決を受けて、エストラーダさんは現地ラジオRPPに、「言葉にできないほど興奮している。大きな喜びを感じている」と述べ、「この時が来れば自由になれると、常日ごろはっきり言ってきた。その時が今訪れた。このために私は今まで闘ってきた」と語った。□
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ポンペイ近くで馬車発掘

知人からの連絡で知った。2021年 2月27日発表:ポンペイ遺跡の北にあるCivita Giuliana(Porta Vesuvioから直線で750m)で発見。3年前に3頭の馬が発掘された厩舎の玄関から出てきた由(http://pompeiisites.org/en/press-kit-en/the-excavations-of-civita-giuliana/;https://gigazine.net/news/20181225-pompeii-third-thoroughbred/)。

日本語で読める記事と動画:https://www.afpbb.com/articles/-/3334024

黄色線がポンペイ遺跡、上の黄色〇印が発掘地点のCivita Giuliana
こういう青銅製装飾から、結婚式で使用された馬車と想定されているようだが、さて

【追伸】以下、在イタリアの藤井慈子氏による新聞記事等からの続報。「座席から麦の穂の痕跡が確認されたことから、Cerere(豊穣の神ケレス)信仰とかかわる可能性が浮上し、このCenereがポンペイではVenere(ウェヌス)と共に信仰を集めていたことから、ケレスとウェヌスなどにかかわるsacerdotessa (女祭司)が同別荘にいたのでは、という説のようです。ただ単純に豊穣のシンボルである麦の穂が、祝祭(結婚式?)の前か後に残っただけではという説も出されています。私的には、後者の方が自然のように思われますが(ケレスとウェヌスの 信仰にかかわるものなら、青銅製メダルの浮彫に、それらの図像が施されてもいいような、、、麦の穂だけでここまでいうのかな?という印象を受けました が、先生はいかがでしょうか)。また、同じような移動用の馬車の出土は、Casa del Menandroから1点、Villa Ariannaから2点確認はされているが、とても比較の対象ではなく、唯一類例として挙げられるとしたら、15年前にトラキアの墓から出土したもの(南ギリシア、ブルガリアとの国境付近)があるそうです。」

【続報】その後、発掘がすすんだようだ。以下の画像の次に3D映像も(ここから行けるはず。拡大してみるとすごい迫力!:https://twitter.com/pompeii_sites/status/1365735037262585857?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1365735037262585857%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fimperiumromanum.quora.com%2F%3Fni%3D0nsrc%3D4snid3%3D18406889849tiids%3D22748989:2021/2/28)。

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うんちの行方と緊急事トイレ:トイレ噺(24)

 最近出版されたトイレ本。新コロナのさなか、色々現地調査しての報告が主体で、災害時など現代的な課題に対して具体的な数字をあげ、提案していてくれているのがいい。本書の最大特徴は現場主義で、これまでの机上の空論の諸先生の作文にない臨場感を感じられることができた。私はこれ読んで、下水道の合流式と分流式の問題点も判明して、すっきり。市場的にはTOTOが一人勝ちしている状況の中で、本書ではLIXILの先端的な試みが目立つのは頼もしい。速読可。

 私もこれを読んで、とうとう簡易トイレを購入することにした。各種ググって見ると、凝固剤や臭気の問題があるようなので、若干高めのものにしたが、実際使ってみないとわからんなあ。夫婦二人で一週間を目安に100回分、保存15年とかで、まあ我ら夫婦にはこれで十分かと、あ、保存的にね(直後、トイレに行ってタナを見たら、すでに別のメーカーの50回分を購入済みだった:こりゃもう認知症じゃ〜。ま、多々益々便ず)。

 うちの嫁さんは、地震で壊れた家の中に取りに入れるの?、あぶないじゃないの、とネガティブだが、生き残った場合を想定してあれでも準備しておかないとね。避難所のトイレ待ちなんかすごいらしいし。

 この本には、その他にも緊急事における「マンホール・トイレ」の情報なんかもあって、有用である。下水用マンホールの下は下水道に直結なので、一応(耐震化する必要あり)問題なく使えるわけだ。

個人用にも9万円弱で入手できるが、勝手に設置はできないだろうし

 こんなものもみっけ。実はイタリアでナヴォーナ広場に面した留学生対象の施設に1年間いたとき、同階居住のアメリカ人女性は朝大学に登学する前にシャワーを浴びるので、二人連続して使用された場合(その階には我ら三名に共用バスルームが一つしかなかった:あとで考えれば別の階にいけばいいだけのことだったのかもだが)、我慢できずに、小はペットボトルを切って、大は黒のゴミ袋をゴミ箱に二重に重ねて、対応したことが一度あったので、まあ想定内:もちろん大は例の共同ゴミ箱に生ゴミとして棄てましたが、何か問題が? (^^ゞ。

左がペットボトル利用の簡易小用器;右はイタリアの街頭の各種分別ゴミ箱:ゴミをいつ捨ててもいいので実に合理的、これを収集車が早朝に起重機で持ち上げてゴミを収集していくので、結構な音がする
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アトス島で女性の骨出土:遅報(69)

 2008年、動物でも女人(雌)禁制が600年間守られてきた聖山アトスに(例外はネズミ駆除の雌猫のみ)、まちがって女性が4人上陸してしまった(https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-31965520080527)、という報道を知ったので、ぐぐってみたら、もっととんでもないことが・・・。

 これまでも女性ジャーナリストが変装して侵入していたことはあったようだが(4世紀以来、12回女性入山が確認されてる由)、パントクラトル修道院の礼拝堂の修復中に、床下から多くの人骨が出てきて、形状的に女性のものと思われる骨が含まれていた(2019/12/24の記事:https://news.livedoor.com/article/detail/17572522/)。

 DNA鑑定も時代確定もされていない段階での情報なので確かなことは不明としか言いようもないが、記事では、女性修道士がいたのかという可能性に言及していた。私的には、ひょっとしたら女性寄進者が死後の埋葬を望んだ可能性もあるような気がするが、どうだろう。

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世界キリスト教情報第1570信:2021/2/22

= 目 次 =
▼「世界ラジオの日」に「独特のメディア」と教皇ツイート
▼ニコライ大主教命日記念しモスクワの教会で日本語礼拝
▼教皇、四旬節初日に「灰の水曜日」のミサ
▼イタリアで昨年上半期に婚姻と離婚が大幅減少、コロナ影響か
▼新規感染ゼロでも台湾はマスク着用「継続」呼び掛け
▼バチカンがコロナ禍で赤字拡大の見通し
▼バチカン市国の新しい教皇代理にガンベッティ枢機卿

 今回はイタリアでの結婚・離婚の件を紹介する。

◎イタリアで昨年上半期に婚姻と離婚が大幅減少、コロナ影響か
【CJC】ローマ発共同によると、イタリア国家統計局は2月19日までに、同国での昨年上半期の婚姻と離婚の件数が前年同期比で大幅に減少した、と発表した。新型コロナウイルス対策のため全土で長期間にわたりロックダウン(都市封鎖)が実施されたことが影響したとしている。
 統計局の暫定的データでは、昨年1~3月の婚姻と離婚件数はそれぞれ約20%減少。同4~6月では婚姻が約80%、離婚は約55%減った。□
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騙された?バチカン

 私は以前(2019/7/8)「バチカンに勝算あるのか」と書いたことがあった。バチカンがこれまでの方針を変えて、中国に歩み寄りの姿勢を取りだしたことに懸念を抱いたからである。この懸念がどうやら現実のものとなったかもしれないのである。

 2020/2/17付で、これまでもバチカン事情に多く触れてきているブログが「バチカンは中国共産党に騙された!」と書いた(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52299680.html)。興味ある向きにはお読みいただきたい。その記事の中に「バチカンは過去、共産主義に騙されてきた歴史がある」、今回もそうで、だが「バチカンは今回の中国側の対応に対して沈黙している」として不満げである。「バチカンは今こそ、中国共産党政権の悪魔性を世界に知らせるべきだ」と。バチカンにはまだ勝算があるのだろうか。

 これの書き手には以下の記事もある。「政治家が好む「会食文化」は廃れない」(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52299885.html)。なかなかエグい内容だった。

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渋沢栄一の毀誉褒貶:遅報(68)

 NHKで清々しく爽やかな雰囲気が振りまかれている。と、むらむら天邪鬼が・・・。知人からご教示頂いた、黒岩涙香『弊風一班・畜妾の実例』社会思想社、1992(原典は「萬朝報」1898年)、を入手できた。「ちくしょう」と発音してみると身も蓋もない。もちろんその効果を織り込み済みの表題だろう。渋沢は、p.37に第90番目に登場する(掲載総数は延べ510人:大まかに言って著名人が早めに出てきている)。

身長は、153cmだったらしい。ただ160.6cmという別説もあって、これだと、伊藤博文と同じになるが、さて:http://irisio.seesaa.net/article/101774731.html

 「(九〇)渋沢栄一は、深川福住町四番地の自宅に大坂より連れ来りし田中久尾(二十八,九)という古き妾あり。日本橋浜町一丁目三番地の別宅には元と吉原仲の町林家小亀こと鈴木かめ(二十四)なる妾を畜う。」

 こんなに番地や実名書かれての暴露記事、いうなれば現代の文春爆弾で、私だったらたまらんが、当時は当事者にとってどうだったのだろうか。彼は1840年生まれで1931年に91歳で死亡しているから、この文面のときは58歳。それで思いついたので例の山田風太郎『人間臨終図鑑』を見てみた。第4巻のpp.370-372で、まずプラス面を書いた後、最後に以下が。「ーーとはいえ、きれいごとばかりで大富豪になれるわけがない。女道楽にかけても渋沢は大変な色豪で、そのためばかりではないが、岩波茂雄に勧められて『渋沢栄一伝』を書いた露伴は、以後渋沢の名が出るたびに不機嫌な顔をした」とある。幸田露伴の本も欲しくなって調べたら、岩波文庫で読めることを知った。また渋沢の自伝『雨夜譚』も岩波文庫にあるようなので、どこまで書いているのか比較したくなったが、そんなことやってる暇はないので、だれかやらんかいな〜。大学のレポートには最適だと思いますが。

 いずれにせよ、女権論者の皆々様がわが祖国の最高紙幣や大河ドラマへの彼の採用に対しまったく非を鳴らす気がないようなのは、たいへん心の広いことである。わが敬愛するイタリア並になったことを言祝ぎたい。

【追記】黒岩をザッと読んでいて色々驚いた。森鴎外(1862-1922)は『舞姫』で留学中のドイツ人女性の話を書いていたが、どうやら留学から帰るなり十八、九歳の児玉せきなる女性(当時三十二歳)を深く寵愛し、細君を離縁し本妻に直そうとしたが、母によりその母なみ(六十歳)ともども外妾とすべしと言い渡され、すぐ近所に別居せしめ、爾来母より手当が送りつけられた、と。なんというマザコン、いや明治の母刀自はしっかりしていたなあ。

 また、ローマ法がらみで私が知っていた末松謙澄(1855-1920)も思いがけず掲載されていて、彼は正二位勲一等子爵だったが、妻・生子は伊藤博文の次女で我がまま放題だったので敬遠し、「妻の厳重なる監視の目を潜り日本橋区箔屋町七番地の絵草紙屋錦華堂浅井一忠の娘けい(二十三)を妾とし、檜物町の春の屋を以て会合の場所とせり」(p.135)、と。

 まあ彼ら両名は一人を囲っていただけのようなので、私からすると、表社会の体面から解き放され、安らぎを求め、素の自分に帰れる場を求めてのことだろうと、なんとなく分かる気がしないでもないが、当たっているだろうか。なに、「家政婦は見た!」の第15作「財界一族の虚飾の争い」(1996年)の再放送を見ての思い付きだが。

【補遺】このブログを読んだ後輩からメールが来た。「黒岩涙香の記事、当時は、この記事に名前が載ることこそ名士の証として、 自分を載せてほしいと要望が殺到したらしいですよ」と。それでそこで紹介された以下を発注した。杉岡幸徳『世界の性習俗』角川新書、2020年。その箇所はpp.156-7。文脈に沿ってまとめると、黒岩は妾制度の猖獗に義憤を感じて書いたのだが、彼の思惑と真逆に「この記事に名前が載ることこそ名士の証、ということで、「早く俺の名前も載せてくれ」「なぜ吾輩を取り上げてくれないんだ」などという要望・苦情が殺到したのです」という仕儀に。この事例を根拠に、著者は、最近の日本での「不倫」騒動の偽善性を指摘さえしているのである。この著者によると、どうやら私もごく最近の風潮に毒されてしまっていたようで・・・、この点は否定すべきもないか。

 ただ著者の筆致は私にはいささか典拠的にいい加減な印象を受けた。まあ七割引きくらいの信頼度で読むのがいい感じではある。というのも、情報のほとんどが他文獻からの孫引きで、しかもいわゆる未開民族の奇習を超時代的に根拠にしているからである。私が現役中に必読書に推奨した赤松啓介は自らの体験談を書いているわけで、そこが説得力の違いのような気がする。

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